もはやクーデター革命軍。米大統領の再選狙うトランプ陣営の支離滅裂

 

ちなみに、トランプが大統領だったら「ロシアのウクライナ侵攻は起きなかった」という説がありますが、これは残念ながら正しいかもしれません。つまり、NATOや日米韓の同盟を「馬鹿にしてぶっ壊そう」としていたトランプの時代であれば、ゼレンスキーのNATO接近についてプーチンが「危険」だと思うレベルは、もっと低かったと考えられるからです。勿論、それで世界が安定するわけではなく、日本の場合はむしろ深刻な危機に陥っていた可能性があります。

それどころか、2016年の大統領選においては、「ヒラリーを落選させる」ためには、ロシアのスパイ組織と結託したなどという、完全に「敵国内通」をやっていたわけです。具体的には、その選挙戦を通じてロシアの影響力を受けていたとして複数の側近が刑事告発されて有罪になっているのは動かし難い事実です。

つまり、ロシアの民間人殺傷を含む一方的な武力行使に対して、西側が一斉に非難を開始する中では、「プーチン支持」「反ウクライナ」の立場を繰り返し主張していたトランプについては、共和党の穏健派の中には抵抗感を持つ層が出てきたわけです。これは全く不思議ではありません。

もう一つ大きな動きというのは、連邦議会下院が2021年7月から行なっている「1月6日調査委員会」の活動です。これは、2021年1月6日に起きた連邦議街議事堂での暴動事件について議会下院が、真相解明を目指すものです。この委員会は、民主党が主導して設置され9名の委員の内訳は、7名が民主党で共和党は2名となっています。どうして下院の委員会かというと、与野党同数である上院とは違って、下院は現在は民主党が過半数を取っているからです。

ちなみに、委員会にいる2名の共和党メンバーのうちのリズ・チェイニー議員(ワイオミング全州区選出)は全体の副委員長、事実上はその委員長を務めて、改めて「暴動へのトランプの関与」について厳しい追及を行っていました。

この「1月6日委員会」の暴露では、トランプの当日の行動や、大統領を護衛していたシークレットサービスが、当日の暴動発生時間帯3時間のテキストメッセージを一斉に消去させられていたなどの不祥事が明らかとなりました。

1番の問題は、ペンス問題です。この2021年1月6日の暴徒の目的はあくまで「大統領選の結果を議会が認証することへの妨害」でした。そのために、暴徒は、認証手続きに協力していたペンス副大統領の身柄を議事堂内で探し回り、その際には、繰り返し「ペンスを吊るせ(殺せ)」と叫んでいたのでした。この事実は、事件直後から動画等で拡散されていたわけですが、今回の委員会活動を通じて、改めて生々しく公開された格好となっています。

この調査委員会の活動を通じて、まず穏健派の中には、やはり暴動の背後にいたトランプの責任は避けられないとして、トランプに対して公然と反旗を翻す動きが出てきました。特に、殺害の脅迫を受けたマイク・ペンス前副大統領その人は、これまでは政治的沈黙を保っていたのですが、重い腰を上げて動き始めたのです。具体的には、トランプへの批判は口にしないものの、アンチ・トランプの候補を予備選で支援するという動きを堂々と繰り出すようになっています。

では、トランプとその支持者はどうかというと、呆れたことに「完全に居直りモード」になっています。その結果として、トランプと、その支持者は「2020年の選挙結果は不正であり、本当に当選していたのはトランプ」という、いわば「全面対決」をメインに主張するようになってきたのでした。

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