終わらない北朝鮮の暴走。金正恩がミサイル乱射を続ける「2つの理由」

2022.10.20
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2022年10月現在、すでに過去年間最多数を超えるミサイルを乱射した北朝鮮。そもそもなぜ北朝鮮は、このタイミングでミサイル発射実験を頻繁に行うのでしょうか。その理由を考察するのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回、金正恩総書記が異例のペースでミサイルを撃ち続ける背景として「2つの国際環境の変化」を挙げそれぞれについて詳しく解説するとともに、今後も北朝鮮の暴走が続く可能性を示唆しています。

国際政治の側面から見た、北朝鮮がミサイルを撃ち続ける背景

10月4日、北朝鮮が中距離弾道ミサイル1発を発射し、日本海から青森県の上空を通過し、東北沿岸から東3,200キロの太平洋に落下した。北朝鮮のミサイルが日本上空を通過するのは2017年9月以来で、最高高度が約1,000キロ、飛行距離が4,600キロと北朝鮮が発射した弾道ミサイルのなかではこれまでで最も長い距離となった。北朝鮮は9月25日以降の1週間で4回もミサイルを発射し、今回の発射は今年で23回目となる。極めて異例のペースだ。今回の発射を含め、北朝鮮が異例のペースでミサイルを発射し続ける背景には何があるのだろうか。国際政治の側面から2つ考えてみたい。

1つは、北朝鮮を取り巻く国際環境だ。トランプ政権時代の当初、トランプ大統領は北朝鮮の金正恩氏をロケットマンと挑発し、2017年は新たな朝鮮半島危機として米国と北朝鮮との衝突のリスクが高まり、日本でも在韓邦人の退避を巡る問題が企業を中心に拡大したのは記憶に新しい。

その後は韓国・ピョンチャン冬季五輪、ムンジェイン政権の太陽政策もあり、米朝の雪解けが一気に進んだ。トランプ大統領と金正恩氏はベトナムとシンガポール、そして板門店と3回も対面で会談するなど、米国との国交正常化と金体制の保障を求める金正恩氏として、トランプ大統領は格好の相手となった。会談が金正恩氏の思うようにいったわけではないが、最も敵と捉えてきた米国の指導者と対面できることは極めて重要だったに違いない。トランプ大統領も北朝鮮指導者と初めて会った米国大統領になったと誇らしげに思っている。

しかし、2020年秋の米大統領選で米朝の雪解けは一変した。オバマ政権と同じく対北朝鮮で戦略的忍耐を貫くバイデン政権が誕生したことで、北朝鮮は好機を失うことになった。案の定、もうすぐ中間選挙となるが、この約2年間、バイデン大統領は北朝鮮を相手にせず、中国との戦略的競争、そして今年に入ってのウクライナ問題で、北朝鮮は完全に蚊帳の外になっている。バイデン政権の発足当初から北朝鮮問題の優先順位は低かったが、何も進まない米朝関係に金正恩氏の不満は高まる一方だった。

そして、今年5月に韓国でユン大統領が誕生したことで金正恩氏の不満ボルテージがさらに高まった。ユン大統領はムン政権からの太陽政策から一変し、対北朝鮮で米国や日本との協力を重視する姿勢を鮮明にし、日米韓で北朝鮮に対抗している。金正恩氏にとってはトランプ・ムン路線が良かったのだが、今後はバイデン・ユンという都合の悪い相手が指導者になってしまったため、北朝鮮はまた孤立することとなった。こういった北朝鮮を取り巻く国際環境の変化が、北朝鮮のミサイル発射の暴走に繋がっている。今回のミサイル発射も日本海などで活発化する米韓合同軍事演習をけん制するためのものだった。

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