8月に亡くなった京セラ創業者の稲盛和夫さんは、多くのビジネスマンや経営者の「憧れ」でもありました。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、稲盛氏が生前にインタビューで答えていた「人は何を心がけるべきか」という問いに対する答えを記しています。
稲盛和夫氏が教える「人間としての正しい生き方」
8月に逝去された京セラ創業者・稲盛和夫氏。私たちの『致知』も35年以上にわたりご縁をいただき、氏は『致知』の成長を喜んでくださいました。
本日は、かつて稲盛氏に『致知』に連載いただいていた「巻頭の言葉」の一部をご紹介します。当時、新聞紙上をにぎわせていたのは数々の企業の不祥事。人は何を心掛けていけばよいのか。稲盛氏が示された答えはいたってシンプルなものでした。
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「人間としての正しい生き方」とは、どのようなものでしょうか。
それは、高邁な哲学や宗教からだけ学べるというものではありません。われわれは、すでに子どもの頃に、両親や教師から「欲張るな」、「騙してはいけない」、「嘘を言うな」、「正直であれ」というような、最も基本的な規範を教えられています。
そのなかに、「人間としての正しい生き方」はすでに示されています。まずは、そのような単純な教えの意味を改めて考え直し、それを徹底して守り通すことが大切です。
いま、社会倫理の回復を図るために、法制度などの厳格化を求める意見もありますが、私はそれよりも、この「欲張るな」、「騙してはいけない」、「嘘を言うな」、「正直であれ」というような、「人間としての正しい生き方」を示した、単純でプリミティブな教えを、まずは社会のリーダー自身が徹底して守り、また周囲に守らせるほうがはるかに有効であると考えています。
最近発覚した企業不祥事は、氷山の一角に過ぎず、日本の社会にはまだまだ多くの不正が隠されているのではないでしょうか。
そうであれば、私はリーダーを筆頭にわれわれ日本人のすべてが、先に述べたように、心の手入れを怠らず、プリミティブな教えを頑なに守り通そうとする、生真面目な社会をつくることが、一見迂遠に思えるものの、日本を再生するための最善の策であろうと思います。
日本は現在、危機的な状況にありますが、私は日本人が本来持っている、このような高い倫理観や勤勉性を取り戻すことにより、必ずや復活できると信じています。
※ この記事は、月刊『致知』2003年1月号の「巻頭の言葉」を再編集したものです
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