首相も大臣も世襲ばかり。危機感も人材も足りぬ自民党が衰退させた日本

2022.12.01
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かねてより人材不足が問題視されていた自民党。8月10日に成立したばかりの第2次岸田改造内閣では早くも3人の大臣が更迭されるなど、その影響は深刻なものとなっています。何がここまで与党を劣化させてしまったのでしょうか。今回、毎日新聞で政治部副部長などを務めた経験を持つジャーナリストの尾中 香尚里さんは、その大きな原因は議員の「世襲」にあると指摘。彼らが幅を利かせ、非世襲議員が旧統一教会に頼らざるをえない自民党の現状を批判的に記しています。

プロフィール:尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

岸田内閣辞任ドミノと世襲

わずか1カ月の間に3人の閣僚が辞任に追い込まれた岸田政権。早くも「4人目は選挙運動員買収疑惑の秋葉賢也復興相か」という声が、まことしやかに囁かれている。

しかし「4人目」の可能性を考える前に、筆者は「3人目」の交代劇に、ある種の深い感慨を抱いた。政治資金問題をめぐって寺田稔総務相が更迭され、後任に松本剛明氏が就任したことである。

松本氏と言えば、自民党から一度は政権を奪った民主党の閣僚経験者であり、一方で父親が自民党で閣僚を務めた世襲議員でもある。政権にとって危機的なこの状況で、こういう人事をやれてしまうのは、岸田文雄首相の危機感のなさなのか、それとも自民党の人材難なのか。

いくつかのメディアが松本氏について「元外相」と紹介した。確かにその通りだ。しかし、松本氏が外相を務めたのは、自民党の政権ではない。民主党の菅直人政権である。

2011年3月、菅内閣で外相を務めていた前原誠司氏に、在日外国人から政治献金を受け取っていた問題が発覚。前原氏は同月6日に辞意を表明し、翌7日、副大臣だった松本氏が外相に昇格した。

政党が異なるとは言え、松本氏にとって今回の総務相就任は、またも前任者の辞任に伴うピンチヒッターという形になった。「何と因果な」と思ったのは筆者だけだろうか。

そして、自民党的な目線では、松本氏は自民党議員(それも閣僚経験者)の父を持つ世襲議員だ。

松本剛明氏の選挙区である兵庫11区は、中選挙区時代には剛明氏の父松本十郎元防衛庁長官と、戸井田三郎元厚相の二人が、自民党内で激しく争っていた。小選挙区制で初の選挙となった1996年、剛明氏は十郎氏の後を継ぎ兵庫11区からの出馬を目指したが、自民党はベテランの戸井田氏を公認した。戸井田氏は選挙期間中に急死し、次男の徹氏が補充立候補した。

剛明氏は無所属で出馬し、小選挙区で徹氏に敗れた。無所属候補は比例代表で復活できないため、剛明氏は議席を得られなかった。

次の2000年衆院選で、剛明氏は民主党から出馬。徹氏を破り小選挙区で初当選した。

中選挙区時代であれば、松本氏が無所属でも下位で当選し、自民党の追加公認を受けることも可能だったかもしれない。だが、1選挙区に1人しか当選しない小選挙区では、このやり方は取れない。松本氏が対立政党の民主党からの出馬に転じたのは、こういう事情もあったのだろう。

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