中国抗議デモの発端、新疆ウイグル「タワマン大量焼死火災」が習近平と中共を追い詰める

2022.12.12
 

習近平は、「皇帝」として君臨し続けられるのか?

今回の抗議行動は、習近平の強権政治に反発し、言論の自由すらない問題を自分のこととしてとらえる若者を大量に生んだ。これが、天安門事件のときのように「民主化」という大きなテーマとリンクし、王丹氏のようなリーダーが登場していたらもっと長期化していたに違いない。

中国の、特にZ世代(おおむね1990年代中盤から2000年代に生まれた世代)を中心にした若者たちは閉塞感を感じている、その矛先は、再び習近平指導部へと向けられる可能性がある。

この世代は5人に1人が就職できていない。中国国家統計局が発表した16~24歳の若年失業率は、2022年7月、実に19.9%と過去最多を更新した。25~59歳の失業率が5%程度であるのと対照的だ。

中国では、16~24歳人口が今後10年程度、増え続ける見通しのため、この先も就活戦線は熾烈な競争になることが予想されるが、現在はそこに新型コロナウイルスの感染拡大と習近平による失政が火に油を注いでしまっている。

大学卒業者の就職先として人気が高いIT業界は、「ゼロコロナ」政策で業績が悪化している。

加えて、習近平が掲げた「共同富裕」に伴う規制強化によって人員削減を進めている企業も多い。つまり、若者だけが憂き目に遭う状況が、習近平の政策によって固定化されつつあるのだ。

10月の中国共産党大会で総書記として3選を果たし、周りを側近やイエスマンで固めた習近平は、形のうえでは、神格化され「皇帝」とも言える絶対的な権力を手に入れることに成功した。

しかし、中国全土に拡がった抗議行動は、思いもよらないところでほころびを生じさせている。

「千丈の堤も蟻の一穴より崩れる」のことわざどおり、「皇帝」の権力は、共産党内部ではなく市民の手のよって脅かされる懸念も抱える。

筆者は、中国問題を考えるとき、いつ、どんな形で台湾統一に乗り出すのかという問題と同様に、市民がいつ「皇帝」に牙を剥くのか、にも注目すべきだと思っている。

とりわけ、来る2023年は、2024年1月に台湾総統選挙、同年11月にアメリカ大統領選挙を控え、様々な動きが出てくる1年になる。習近平が国内をどう落ち着かせ、悲願の台湾統一へと布石を打つのかに着目したいものである。

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清水克彦(しみず・かつひこ)プロフィール
政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師。愛媛県今治市生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得期退学。文化放送入社後、政治・外信記者。アメリカ留学後、キャスター、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。
著書は『日本有事』(集英社インターナショナル新書)、『台湾有事』『安倍政権の罠』(ともに平凡社新書)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)、『ゼレンスキー勇気の言葉100』(ワニブックス)、『頭のいい子が育つパパの習慣』(PHP文庫)ほか多数。

image by : Xiao Zhou / Shutterstock.com

清水克彦

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