価値観の押し付けに辟易。欧米を見切って中国を選び始めた第3極の国々

 

欧米に代表される基本的人権の尊重、報道や表現の自由という権利に対して私は100%支持しますし、国際法を実務に適用する身としては、それらの理念は私の判断基準にもなっていますが、あえて問うのは「その基盤となっているのは、“だれの価値観か”?」ということです。

その価値観を唯一の善と見なし、それに従わないものは悪というレッテルを貼ることで対峙して、価値観の押し付けに走るという姿、そしてそこから起こる戦争という悲しい歴史は何度も繰り返されています。

“国際社会”、そして中国・ロシア包囲網のグループが、昨今の中国が経済力と軍事力を盾に勢力圏を拡げる姿を非難し、警戒を強めていますが、これはアメリカも今も昔も実行していることですし、予てより西欧諸国がしてきたことではないのでしょうか?

繰り返しますが、私は中国が行っているとされる蛮行を一切評価しませんが、同時に国内で先住民から財産土地を奪ってきた欧米諸国の過去の蛮行を棚に上げて、中国などの現在の行動を非難するのはいかがなものか?と感じるのも事実です。

アフリカ大陸やアラビア半島が不自然な形で分割された元凶は欧州各国による行動でしたし、ラテンアメリカ諸国に対するかつてのスペインの蛮行も、圧倒的な軍事力と経済力などを基盤とした力による蹂躙と価値観の押し付けに他なりません。

各地域が経済的な力を付けはじめ、似たような境遇の国々と集い一つの声を発するようになってきた今、これまで欧米諸国にやられたことを忘れないと同時に、同様の構図での圧力をかけてくるように思われる中国・ロシアに対する警戒が明確に示される中、どちらの極にも属すことがない“第3極の出現”が見られるようになりました。

特徴としては、欧米の影響からの脱却と独自路線の選択を追求し、国際情勢の方向性を決める事柄に足して寄り合って大きな声とうねりを創り出す勢力です。中東各国、アフリカ諸国、中南米諸国が中心となり、そこに東南アジア諸国が加わって、実際には最大の勢力となっています。

その存在がよりクリアに認識できたのが、皮肉なことに昨年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻以降の各国の対応の温度差です。

ロシアによるウクライナ侵攻そのものに賛同する者は、ごく一部の国を除き存在しませんが、ロシアを国際経済および国際機関の決定から孤立させようとする試みに対しては、賛意を表明しませんでした。

欧米諸国とその仲間たちが形成した対ロ包囲網は、非常に厳しい金融・経済制裁をロシアに課すというもので、アジア諸国や中東諸国、アフリカ諸国などにも加わるように依頼がされましたが、多くの新興国と途上国はそれらのエクストリームな姿勢とは一線を画す決断をしました。

その典型例がインドとトルコですが、その中身については何度もこのコーナーでお話ししていますのでここでは割愛しますが、反ロシアグループとも、親ロシアグループとも距離を置き、事象が起きる都度、対応を決めるという姿勢が特徴的です。

一般的には実利主義と言われていますが、自国にとっての利益をベースに対応を決めるというスタイルを取っており、その姿勢に賛同する国数は増える一方です。

どうしてでしょうか?

それはそれらの国々の多くが長年の経験をもとに得た知見に基づくものでしょう。

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