価値観の押し付けに辟易。欧米を見切って中国を選び始めた第3極の国々

 

旧ユーゴスラビア紛争、コソボ紛争、イラクに対する多国籍軍の対応、アフガニスタン紛争など、私自身も直に関わった案件を後から見てみると、悪い者とそれにいじめられているかわいそうな者、そしてそれを助ける優しい人たちという構図が意図的に作られたことを思い出してしまいます。

それぞれのケースについて詳細に説明することはここでは避けますが、“情報”が作り上げたイメージによって善と悪という二分論が必ず成立されるという事態になりました。

旧ユーゴスラビアではセルビア(ミロシェビッチ大統領)を悪者とした半面、同じような蛮行を行ったことが分かっているクロアチアは“守るべきもの”として欧米諸国も国連も支援を行い、セルビアという共通の敵を創り出してしまいました(クロアチアでそれを指摘した際、とても嫌な顔をされ、それからしばらく、虐められた記憶がありますが、その後、このことについていろいろと意見交換する場を持つことが出来、相互理解が深まりました)。

似たようなことがほかの紛争でも行われ、私たちの中に無意識に二分論のイメージを焼き付けてしまいました。

オバマ政権後期から始まり、トランプ政権で先鋭化した“米中対立”も同様に、私たちの考えや姿勢を無意識に二分論の罠に誘い込んできたように思います。

想像を絶するスピードで中国は経済成長を遂げ、全方向的に中国依存を強める結果をもたらしたことで、中国は、バイデン大統領の表現を借りれば、「米国にとって唯一の競争相手」の地位に座ることとなりました。

先日亡くなった江沢民氏の時代に中国市場に自由経済が持ち込まれ、これまで地位が低いとみなされていた民間企業の経営者などをgrowth engineとして取り立てたのを機に、胡錦濤国家主席と温家宝首相時代を経て、今、年間GDP成長率は低下しているものの、中国経済はアメリカ経済に次ぐ世界第2位の規模を誇り、いつ世界第1位の座を奪うのかというカウントダウンが始まっています。

一帯一路政策を通じてアジア・アフリカの国々は中国と結びつき、経済的な成功を手にしたものもいれば、債務地獄に陥り、借金のかたに中国に次々とインフラ施設を取られる国も多数発生しました。

その手法を厳しく非難する声も多く、また債務超過に陥った国々や中国に利子支払い猶予を依頼しなくてはならない国のリーダーなどは“中国に騙された”と糾弾する者もいますが、それを自業自得と非難するグループもあります。

そこに中国の軍事力が量的に格段に拡充されると、アジア太平洋、特に南シナ海周辺で各国との衝突が散見されるようになり、軍事力による圧倒も見られるようになりました。

そしてウクライナ侵攻前のロシアと組んで国家資本主義体制を作り、次々とその勢力圏を伸ばし、それはまるで、かつてアメリカに代表される資本主義自由社会圏とソビエト連邦に代表された共産主義・社会主義経済圏との対峙というブロック化の様相も示しています。

米ソ冷戦時代の構図とは違いますが、米中対立の構図は新たなブロック化をイメージさせます。

問題は、それをどちらかが正しくて反対側が間違っているというロジックがまたぶり返し、ソ連崩壊後、唯一の超大国となったアメリカが、その余韻に浸る間もなく、新たな“敵”を探し出したことにあると考えられます。

言い換えると欧米諸国に挑戦を仕掛けてくるものを叩くという風潮です。かつて日本もバブル期に随分と嫌がらせされたのは記憶に新しいかと思います。

現在、その相手こそが中国です。

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