例えば、「欧米諸国はいつも上から目線でああしろこうしろと言ってくるが、いつも命令調だし、これが正しいという言い方だし、おまけに口ばかりで何一つ見返りがない。もううんざりだ」という感情がそうでしょう。
これはアメリカ政府が再三インド政府に対して対ロ包囲網に加わるように要請した際にインド政府が示した反応でもありました。
「助けが欲しいなら依頼すべきところを、どうしてアメリカはいつも上から命令してくるのだろう?そしてどうしてそれにインドが従わなくてはならない理由があると考えるのか?ナンセンスだ」
「欧米諸国との付き合いで分かったのは、彼らは自分勝手で、いつまでも自分たちのロジックで動き、自らの都合で他国を巻き込もうとする。そして過去の蛮行を棚に上げ、反省することもなく、他国を非難する。それとはもう距離を置くべき時期だろう」
このような姿勢は、戦略的にそれを行うトルコは別としても、東南アジア諸国にもシェアされ、欧米のご都合主義に振り回された中東各国にも採用され、そしてpromises had never been keptを痛いほど経験してきたアフリカ諸国にもシェアされています。
それらの第3極の国々に共通しているのが、「中国はいつも内政問題には干渉してこないし、表向きは相互の経済的な利益にしか関心がないように振舞い、実際にこちらの必要とするものを提供してくれる。もちろんその善意は無料ではないが、欧米諸国にいろいろと内政問題を非難され、制裁を課される度にいつも助けてくれるのは、それなりに評価できる」という反応と評価の存在です。
面白いことに反目しあっているイランとその他のアラブ諸国を繋ぐのは中国ですし、アフリカ東部の国々における中国の影響力は絶大です。
そして相互に経済的に必要とするものを与え合う戦略的パートナーシップを結んでいますが、一切内政問題には口出ししあわないという基本姿勢が共有されています。もちろん債務の罠や、借金の片に港湾などの戦略的インフラを取り上げるという別の側面が、中国の対外戦略に見え隠れすることは、非難の対象にはなっていますが。
ロシアによるウクライナ侵攻後、これらの国々を束ねた外交的な威力がものを言い、ロシア包囲網に穴をあけることに貢献することとなりました。多くの国はべったり中国・ロシアのグループとは言えませんが、第3極に属しつつも、ここ最近の姿勢は中国寄りなのかもしれません。
またこれらの国は、私たちが日々目にし耳にするウクライナ情勢についての見解をシェアしていないことが多くあります。起きていることに対しては強い憤りとシンパシーを感じるものの、どちらが悪いのかという議論には、公の場では与しようとしません(様々な調停グループにおいて、食事をしたり、協議をしたりする際には、“個人的な意見”がたくさん聞けますが)。
話がいろいろなところに飛び、そして内容が若干過激になってきたようなので、このあたりで締めたいと思いますが、最後に私が何度か尋ねられ、まだ答えを提供していない問いをご紹介しておきます。
それは「そのような世界、国際情勢において、日本の軸足はどこに立っているのか?」という問いです。
【インド・太平洋地域という形で表現された“アジア”にその軸足はあるのか?】
【それともより欧米諸国からなるG7と価値観を共有する世界に軸足を置くのか?】
それとも、【かつての日本のように、全方面と上手に付き合い、決して敵対しないという元祖第3極のような世界に軸足を置く道を選ぶのか?】
これからさらに大きな混乱の渦が巻き起こる国際情勢のなかで日本がうまく生存していくためには、軸足を置く場所を明確にする必要に近々直面することになるかと考えます。
以上、国際情勢の裏側でした。
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