脱ゼロコロナの「春節大フィーバー」に乗った国々、出遅れた日本

 

中国経済の先行きを危ぶむ声はコロナ禍のなかで膨らんでいて、なかでも懸念されたのが、中国人の消費者意欲はもうコロナ前には戻らない、との指摘だった。

長引くコロナ禍で、中国社会には先行き不透明感が広がっていたのだから当然といえば当然だろう。だが、ふたを開けてみれば中国人の爆消費は相変わらずで、しびれを切らした消費者たちの旅行・買い物熱は、予想外の回復力を見せたのだった。

そして中国人観光客の爆消費の受け皿となったのが、先に触れた東南アジアの国々であった。しかも彼らの中国人観光客誘致の熱量は、けた外れに高かったのである。

おそらく最大の受益国となったのはタイだが、そのタイは、中国から観光客を、アヌティン・チャーンウィラクン副首相を筆頭に3人の大臣(運輸大臣と観光・スポーツ大臣)で空港まで出迎え、「タイへようこそ」とアピールしたのだ。

フィリピンも同じように観光大臣が第一陣を空港で出迎え、民族音楽のパフォーマンスまで披露した。インドネシアは観光クリエイティブエコノミー省とバリ州政府が合同で広東省発の第一便を歓迎する式典を開催した。

その他にもモルディブは政府がウォーター・サルートでアーチを描き中国人観光客が乗ったチャーター便を歓迎し、オーストラリアはシドニーのオペラハウスをチャイニーズレッドにライトアップして春節を祝うといった具合だ。いずれも中国人観光客が大挙して向かい、彼らの爆消費の恩恵に浴した。

中国国家移民管理局がウェブサイトで、1月8日から移民管理政策措置を最適化すると発表した直後に、いち早く「中国人観光客を歓迎」とウェイボーで発信したフランスも、中国人の人気が高く多くの観光客が詰めかけた国の一つだ。

こうしてみれば際立つのが、日本の観光業界の出遅れ感だ。原因はおそらく日本政府が春節を前に打ち出した「入国に際しての新たなルール」だ。こう書けば、「中国で感染爆発が起きているのだから新ルールは当然だ」という反論が聞こえてきそうだが、本当に感染対策になったのだろうか。東南アジアで感染急拡大となったのだろうか。

メディアが垂れ流す「中国悪」の情報によって、日本の政治は何かにつけて中国を敵視することで人気取りをしようとする。今回の新ルールにも同じ匂いが漂うが、それで日本は本当に強くなったのだろうか。日本はそろそろ真剣にこんな「政治的な点数稼ぎ」の収支を考えるべきだろう。

目下、最も心配すべきはオミクロンの変異株「XBB.1.5」なのだろうが、それにはまったく対策を採らず、すでに日本に蔓延するのと同じ中国のオミクロン株を警戒するというのだ。中国がそれを「非科学的」と批判するのは当然だろう──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年2月5日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by:Robert Way/Shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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