自民党こそが「平和ボケ」岸田政権では有事の対応などできぬ“証拠”

2023.02.15
 

続く菅義偉政権では、感染者が保健所の調査にうその申告をしたり、宿泊療養(これ自体が感染者に十分な医療へのアクセスを与えられないという、政府の怠慢である)などの要請に応じなかったりした場合に、罰則を課す規定が設けられた。一時は懲役刑の導入まで検討された。感染対策が後手に回り、国民の生命も経済も痛めつけた自らの責任を棚に上げて「国民の責任だ」と言わんばかりの施策だった。

そして岸田政権の「5類」移行問題だ。要するに、コロナ禍が事実上終わり「平時」に戻ったことを高らかに訴えるための、露払いのようなものである。

確かに、オミクロン株への置き換わりが進む中、かつてのような「緊急事態宣言を発令して国民に大規模な行動自粛を求める」施策は、もはや意味をなさないだろう。しかし、今は第8波のさなかだ。政府が国民に危機を訴える姿勢を失っている間に、全国の死者数は今年になって過去最高を記録している。

コロナ禍関連の経営破たんも、昨年から勢いを増している。コロナ禍で売り上げが減った中小企業の資金繰り支援策だった実質無利子・無担保での融資(ゼロゼロ融資)の返済が本格的に始まったことが影響しているのは間違いないだろう。

多くの国民が今なお社会的にも経済的にも苦しみ、生命と暮らしの危機に脅かされている中での「2類から5類は」は、その是非以上に「ここから先は『平時』。後は国民の自己責任で」というアナウンスに等しい。

「5類移行後も政府は国民の命を守り抜くために全力を尽くす」という力強い決意は、岸田首相から全く感じられない。それどころか、首相は前述したように、この「国民の命を守り抜く」という言葉を、国会で防衛費増額の文脈で使ってみせたのだ。

その言葉を使うべき場面は、そこじゃないだろう。そんな思いしか持てなかった。

思うに自民党政権は、本当の意味で「有事」に対応できる政権ではない。

高度経済成長期で税収は増える一方、冷戦構造が世界秩序に奇妙な安定感を与え、米国の機嫌を損ねさえしなければ、経済でも安全保障でも、自分の頭で難しい判断をする必要がない状態で、自民党は政権交代のない「万年与党」の座に安住していた(それを許した責任は、当時の野党勢力にもあるが)。

55年体制が崩壊した後、日本は敗戦以来の「国難」とも言える状況をいくつも経験した。だが、阪神・淡路大震災(1995年)の時は、自民党は与党だったとは言え、首相は社会党の村山富市氏。東日本大震災(2011年)の時は民主党の菅直人政権で、自民党は野党だった。

自民党は「有事への対応能力」を試されることなく、社会党や民主党を批判して「危機管理に強いのは自民党」イメージを振りまいていればよかった。ありていに言えば「平和ぼけ」していたのだ。

そんな自民党が、民主党から政権を奪還して初めて遭遇した「国難」的危機がコロナ禍だった。そして、安倍政権以降三つの政権の対応のお粗末さは、ここで繰り返すまでもない。正直、筆者にさえ「政権担当経験の長い自民党は、野党よりは危機対応に長けているのかも」という幻想があったが、その幻想はこの3年でもろくも崩れ去った。

彼らは何かにつけて「現行憲法では危機管理に対応できない」と言う。しかし、コロナ禍のような感染症でも、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故のような大災害でも、政府が現行憲法の範囲内で、国民の生命を守るために強権を発動できる仕組みは、当たり前に存在する。

print
いま読まれてます

  • 自民党こそが「平和ボケ」岸田政権では有事の対応などできぬ“証拠”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け