「嵐の前の静けさ」か?中国がジワジワ狙う国際社会からの台湾排除と第3極国家の統一

 

中国の武力侵攻が台湾存続に繋がるというパラドックス

その成否を占うのが、今月30日に大統領選挙を控えるパラグアイです(新大統領就任は8月)。現在、優勢を保つ与党候補のサンティアゴ・ペニャ財務大臣は「台湾との歴史的な関係は常に優先される」と言い切り、台湾との国交の維持、そして民主主義陣営に留まることを経済的な実利よりも優先するという姿勢を示しています。それに対し、支持率が拮抗している野党連合のエフライン・アレグレ元公共事業・通信大臣は、明言は避けているものの、ペニャ候補との立場の違いを鮮明にする狙いもあり、「台湾と断交し、今こそ中国と国交を樹立することで輸出を増やし、スランプにあえぐパラグアイ経済のカンフル剤にする」と述べ、予断を許さない状況です。

もし台湾がパラグアイを失うことになれば、南米には台湾と国交を持つ国がいなくなり、“主権国家”として南米を訪れることが実質的にできなくなるため、中国が主張する「中国大陸と台湾は一つの国に属する」という【一つの中国】論が全面的に肯定される状況にもつながりやすくなり、まさにこれこそ台湾が恐れ、しかし中国政府が望む“平和的統一”に繋がる結果になり得ます。

友好国としてアメリカ政府は台湾の抵抗に手を貸すことになるかもしれませんが、実際に台湾との国交を持たないアメリカ(中国と国交樹立している)に、国際法上何ができるのかについては、あまり期待できないものと考えます。

変な言い方をあえてすると、もしかしたら台湾にとっては中国が武力侵攻に打って出てくれた方が、アメリカや日本、欧州各国の支持を得ることが出来、台湾の存続に繋がるかもしれません。

中国が軍事・経済力の著しい強化に伴って行使する非軍事的な働きかけは、台湾情勢のみならず、世界情勢にもじわじわと浸透してきています。

イラク、アフガニスタン、ミャンマー、シリア、そして東アフリカ諸国からアメリカおよび欧州各国の軍と企業が次々と去っていく中、その空白を迅速かつ着実に埋めに来たのが中国(とロシア)です。

例えば、すでにエチオピアをはじめとする東アフリカ地域は中国の影響圏となり、アメリカによるテロとの戦い(Global War on Terror)の戦略拠点であるジブチの港も中国の手に落ちていますし、クリントン政権がlast frontierと称したミャンマーも、2年前の国軍によるクーデーター以降、完全に中国の勢力圏に加えられていますが、ミャンマーにおける影響力は長きにわたり、中国政府が仕込んできた工作の結果と言われています。

シリアについては、まだロシアの影響力が目立つのですが、実際にはアサド政権下のシリアの再建において中国がどっぷりと入り込んでいますし、アフガニスタンのタリバンとの友好関係も、アフガニスタンにおける中国の存在感と影響力を確実にしています。

そしてイラクについては、20年にわたったアメリカによる占領でめちゃくちゃにされた混乱の後、中国が入り込み、戦略的なパートナーシップ協定を結ぶことを通じて絶対的な影響力を築いています。

それが今年の中国外交の目玉とされたイランとサウジアラビア王国の歴史的な和解につながっていると思われます。水面下で進められた中国政府による仲介も、イラクがイランとサウジアラビア王国を繋ぐ役割を果たしたと言われています。

それが3月10日のサプライズに繋がり、習近平国家主席の第3期目の門出を祝う餞に使われるというお膳立てに繋がっています。

イランとサウジアラビア王国の和解は、長年続いてきた両国の代理戦争とも言われるイエメン内戦にも解決のきっかけを与えており、イランがフーシー派に働きかけ、敵対してきたサウジアラビア王国との和解に向けた対話につなげるという快挙が現在進行中ですが、実はこのフーシー派への働きかけも中国政府が行っているという情報もあります。

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