「嵐の前の静けさ」か?中国がジワジワ狙う国際社会からの台湾排除と第3極国家の統一

 

着々と進められている中国による台湾統一作戦

米中間の緊張の高まりに合わせて、中台間の緊張の高まりが報じられていますが、琉球カンファレンスという枠組みにおいては、今でも双方ともに参加し、琉球という共通の認識で対話が行われているのは非常に興味深い状況です(今年はまた来月に開催だそうです)。

しかし、中国政府による台湾統一に向けた動きは着々と進められています。とはいえ、習近平国家主席が中国人民解放軍に命じた“2027年には台湾への武力侵攻ができる準備をするように”というハードラインの統一に対する動きはあるようですが、実際には主だった活動は非軍事面で進められています。

その最たるものはサイバー攻撃も含む台湾国民へのイメージ戦略です。与党民進党の敗北を招いた先の選挙(台北市長選など)への介入疑惑やウェブサイトの改ざん、親中派とされ現在は野党になっている国民党との接近と支援、中国本土と台湾のビジネスのつながりをカードとして用いる戦略(交流を促進したり、台湾対岸に経済特区をつくったり、また台湾の会社が中国本土に支社や支店、工場を持つことを後押ししたりする)を通じて、台湾の内政と国民感情に対して直接的な影響を与える手段です。

このソフトライン(非軍事)の台湾へのアプローチは、市民レベルでは比較的功を奏していると言われていますが、政府レベルでは政争の材料にされ続けています。

そして外交面では、アメリカによる激しいカウンターアクションを呼び込んでいますが、実のところ台湾国民のアメリカへの感情はプラスなのかマイナスなのかは分かりません(ただ、ペロシ下院議長が訪台した際の喝采と歓迎は、ポジティブなイメージなのかもしれません)。

印象操作やサイバーの他に、対台湾問題で中国政府が用いる非軍事的な手段・攻撃は、別の形でも表面化してきています。その典型例が最近、報じられたホンジュラスの変心です。

再選されたホンジュラスの現大統領はこれまで台湾との国交を「80年にわたり続く継続すべき歴史」と表現して大切にしてきましたが、中国からの経済的なオファーや支援、投資などの条件を提示されたこともあり、外務大臣に中国との国交樹立に向けた手続きを始めるように指示し、実質的に台湾との国交を諦める方向に舵を切りました。

ホンジュラスが北京と国交を樹立することを決めたことで、3月25日に台湾との国交が断絶され、結果、台湾と国交を持つ国は今日の段階では13か国(ニカラグア、パラオ、エスワティニ王国、セントルシア、マーシャル諸島、セントクリストファー・ネービス、ベリーズ、ハイチ、ナウル、パラグアイ、ツバル、グアテマラ、セントビンセント及びグレナディーン諸島)にまで減少しています。

このような動きは2017年以降、活発化しています。中南米諸国では2017年6月のパナマ、2018年4月のドミニカ共和国、同年8月のエルサルバドル、2021年12月のエクアドル、そして今年3月25日のホンジュラスといったように、台湾との国交を断絶し、中国との国交を樹立する外交的な動きが連発しています。

同様の動きは太平洋の島嶼国にも広がっており、中国の進出に脅威を抱きつつも、中国がオファーする経済的な利点と天秤にかけるかたちで台湾との関係を清算し、中国との国交樹立に踏み出す国々も年々増えています。

1997年には30か国と国交(外交関係)を持っていた台湾ですが、その数は今ではすでに半分以下になってしまっています。

台湾政府は必死に繋ぎとめを行っていますが、台湾離れの流れはなかなか止まりそうにありません。

イメージとしては、一枚一枚と台湾の持つ外交的なカードをはぎ取り、国際社会において台湾を国家として承認する国を引きはがして中国側に寄せてくることで、台湾の“独立国”としての存在理由(raison d’etre)をなくし、いずれは国際社会に「台湾は中国の不可分の一部」と物理的にも、心情的にも、外交的にも、さらには規範的にも認めさせていくという“平和裏の統一”へとじわじわ進めているように見えてきます。

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