「嵐の前の静けさ」か?中国がジワジワ狙う国際社会からの台湾排除と第3極国家の統一

 

世界の問題解決に乗り出す中国に歩み寄る第3極の国々

サウジアラビア王国およびUAE、オマーンなどとも戦略的なパートナーシップ協定を結び、イランとは25年に及ぶパートナーシップ協定が結ばれていることもあって、中東地域の安定と統一性を高めることにも中国が貢献したという見方がされています。

中国は見返りにエネルギーの安定供給と外交的なサポーターを獲得し、欧米諸国から投げつけられる中国批判の拡大を阻止し、“欧米が国内に人権問題への懸念を抱える国とレッテルを貼る仲間”同士というラベリングを敢えて用いることで、中東地域、そしてアフリカ地域を中国サイドに近づけることに成功しているように思われます。

そしてアジアの隣国でさえも扱いに苦慮している軍政のミャンマーにも影響力を持ち、今、民主派グループと国軍の間の協議を取り持とうという動きを中国が取り、ミン・アウン・フライン総司令官がそれを歓迎し、民主派グループも中国による仲介に応じる動きを見せる中、確実にASEAN諸国からの信頼を勝ち得る方向に進んでいるようです。

ASEAN諸国については、常に拡大する中国の影響力に警戒心を持っていますが、口だけの欧米諸国とは違い、実際に実利ももたらし、地域の問題解決に乗り出す中国に歩み寄ってくる動きが顕在化してきています。

その結果、米中対立の2極化構造において、どちらにも与せず、実利に基づいて行動する第3極に位置する“グローバル・サウス”の国々も、じわじわと中国サイドに寄ってきているようにも見えます。

先のブラジル・ルラ大統領と習近平国家主席の接近や、ラブロフ露外相をブラジリアで迎えるというパフォーマンスは最近の例だと思われますが、同じアジアに位置し、常に隣国として中国に対する警戒心を持つがゆえに日米豪と対中包囲網に参加しているかと思えば、中ロが引っ張る上海機構にも参加しているインドも、中国との距離を縮めているように見えます。

これまでグローバル・サウスの国々は欧米と中ロと等間隔の距離を保ちながら、独自のスタンスを協力して推し進める“緩やかなパートナーシップ”を実施してきましたが、習近平国家主席の第3期目に入ってから顕在化する「国際的な懸念事項の仲介役」という姿勢を受け、じわじわとグローバル・サウスの国々は中国寄りになってきています。

これに危機感を感じたのがG7で、先の外相会談でもグローバル・サウスの国々への配慮や、インド太平洋地域に対するG7の恒久的なコミットメントの確認、そして中国の脅威を今後、毎年G7外相会合のアジェンダとすることなどに合意していますが、それがグローバル・サウスの国々を再度、G7側に引き寄せてくるかは分かりません。

特に今年G20の議長国を務めるインド、そして昨年の議長国インドネシアが、グローバル・サウスの国々を束ねるコアの国々であることから、両国およびトルコ、ブラジルなどとの関係改善が必要なのですが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて欧米諸国とその仲間たちが実施した対ロ制裁と、その強要を機に、それが徐々に難しくなってきているように思われます。

中国によるロシア・ウクライナ間の仲裁が今後、どのような状況になるのかは見えませんが、中国政府が仕掛ける非軍事的な方法を通じた影響力拡大は、紆余曲折を経て、じわりじわりと実を結んできているように思われます。

そのような中、中国との緊張関係を高める方向に舵を切っているように見える日本ですが、果たしてそれは、地政学的なリスクに鑑みた時に、適切な方向性と言えるか。

確実に中国が国際社会における影響力を拡大し、非軍事的な方法で仲間を増やしている状況において、今後の中国の出方を注視したうえで、中長期的な方針に対する決断が必要となると思われます。

以上、国際情勢の裏側でした。

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