これが現実。どんなに「ずさん」な保育でも子を預けるしかない都市部の親

Preschool classroom with yellow chairs and table
 

ここで、「何てひどい保育園だ」というのは簡単である。
問題は、抱っこしようにも、何をしようにも、人出が足りないという根本的リソース不足の方である。
そして、そんな保育園であっても、親はとにかく預けたい、預けるしかないので、預ける。

そうして育った子どもたちの次の行く先は、小学校である。
問題が起きないはずがない。

当たり前だが、全ての保育園がこうという訳ではない。
むしろ、懸命に子どものために、健全な保育をしようとしているところが大多数だろう。
しかし、「多忙」と「無理」はすべてを壊す。
健全にやりたいのにおかしくなる保育園や、最初から金儲け主義で始める保育園が出てきても不思議ではない。

考えてみれば、「働き方改革」が進み、幼い子どもを預けて働くことが推奨されている。
そうなると、保育士の「働き方改革」はどうなるか。
これが進むほど、保育士の働き方改革は、悪化の一途を辿るという矛盾が起きる。
正規の保育士が「泥を被る」形になる。
当然、なり手は減る。

そして、その後の煽りを食うのは何よりも子ども自身であり、更には小学校現場であり、ひいては社会全体である。

結論として言いたいのは、社会に「過剰な依存」が蔓延しているということである。
自助努力で如何ともし難い現状に対し、「公」はそこまで助けてくれないというのが現実である。

人に迷惑をかけてもいいし、頼ってもいい。
しかし、誰かに頼ったとしても選択の最終責任は常に自分自身がとらねばならないということは念頭に置いておきたい。
苦しい者同士がお互いに消極的にもたれかかる「共依存」の関係では、落ちていくばかりである。
自立した者同士が積極的に支え合う「相互依存」の関係が理想である。

いずれにしろ、政府先導の働き方改革も何も、これらの問題が厳然とある以上、どこか絵空事である。
子どもを預けて働く親がより増えることへの負の面への解決策が見えない。
そしてこれら全ての根本は、日本の経済の問題であり、見えない貧困の問題なのかもしれない。

子どもを預かる全ての施設は、そういう複雑な問題の受け皿となっている。
保育園や幼稚園、学校に勤める以上、あらゆる複雑な問題は避けがたいという自覚をもって働いていく必要がある。

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