発売3日間で20万食を販売。丸亀製麺「シェイクうどん」が大ヒットした当然の理由

 

Z世代に向けた「新しい食べ方」

「丸亀シェイクうどん」のテーマは「持ち帰りの新体験」。これはこの商品のYouTubeを見ると一目りょう然。若い女性が先頭に立って、登場人物がみな躍動している。130人のエキストラが参加して撮影されたという体育館の中でのパフォーマンスが圧巻で、このテーマの狙いが明確に読み取れる。

「丸亀シェイクうどん」のYouTube

ここでは高校生の部活のようなシーン、新入社員のようなシーン等々、コロナ禍にあって抑圧を迫られた層が生き生きとしている。コロナがこの5月8日に「5類感染症」となったことを皮切りに、従来通りの活動を行い、その開放感を全身で楽しもうという思いが伝わってくる。

外に出て開放感を思いっきり楽しむ、といったイメージのテークアウト商品

外に出て開放感を思いっきり楽しむ、といったイメージのテークアウト商品

このおおらかさの中に気づくことは、ここに登場している世代はZ世代であること。これからのメインターゲットに対しての「うどん屋を新しい形で」利用してほしいとメッセージが込められている。そこで感じることは、これまでの「丸亀製麺」のイメージとはまったく異なっていること。店舗そのものが「製麺所」で、粉からうどんが丁寧につくられているというシーンとは真逆と言っていい。

丸亀製麺のマーケティング本部長は南雲克明氏。南雲氏はB to Cのマーケターとして知られてトリドールホールディングスの代表、粟田貴也氏より「丸亀製麺のブランド力を強くしてほしい」と期待をされ、2018年8月に入社。その後、コロナ禍に直面することになるのだが、この間の同社の動向は南雲氏の役割がいかんなく発揮されていると言ってよいのではないか。

「全社一丸」となって取り組む

筆者は南雲氏のリモートセミナーを拝聴したことがある。ここで知り得た丸亀製麺のマーケティング戦略について印象深いことをまとめておきたい。

まず、丸亀製麺が最も重要としているキーワードは3つ。

1番目、「競争しない」。価格競争となれば利益が削られる。競争の先には未来がない。いかにして「競争のない構造的優位」を創っていくかが重要だ。

2番目、「最重要はKANDO(感動)」。顧客は集めるものではなく創るものである。KANDO(感動)こそが顧客を創造する源泉価値であり、人はそれに強く心が動かされて行動(購買)する。

3番目、「二律両立」(トレードオン)。これは造語であるが、ビジネス上一般的に言われるトレードオフではなく、トレードオンこそ価値を生み出すという考え方。事前合理性のない非合理の強さを信じて追及していくことが重要で、それによって独自の市場を創造し構造的優位を構築する、ということだ。

この3つが後述する丸亀製麺の「本能が歓ぶ食の感動体験を探求し世界中をワクワクさせ続ける」というミッションを支えている。

では、マーケターはこのミッションのテーマとなる顧客体験価値(CX)の向上にどのような心構えでのぞむべきであろうか。当事者である南雲氏はこう語る。

「持続的に選ばれ続けるブランド・企業になるためには、そのブランドでしか体験できない顧客体験価値をつくり、時代に合わせて提案し続け、進化させ続けることが重要。これはマーケティング部門・担当者の最も重要な役割の一つです。マーケティング戦略上の最重要課題として、顧客起点で統合的な絵を描いて、全社を巻き込んでリードして、実現することが求められる」

CX向上のためには、まず「全社一丸」となること。丸亀製麺では各部門のすべての戦略・行動が「顧客体験価値向上」というビジョンを実現するように設計されている。

南雲氏が社内で他の部門の部門長と会話をするときに、必ず「それによってCXが向上することになるか」というところに落とし込んでいる。このようなコミュニケーションが丸亀製麺の企業文化となっている。

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