有給休暇が取得できないケースとは?知っていて損はない仕組みを解説

"Paid vacation" in Japanese on the calendar."Paid vacation" in Japanese on the calendar.
 

会社員には有給休暇という制度がありますが、それが取得できる/できない場合があることをご存じですか?今回、無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者で社会保険労務士の飯田弘和さんが、有給の取得について、様々なケースをもとに解説しています。

休職中の有給休暇申請

ある事業主さんからのご相談です。私傷病で休職中の従業員から、年次有給休暇取得の申請がありました。認めなければならないのでしょうか?

このようなご質問をときどき受けます。似たようなご質問として、労災で休業中の従業員からの年次有給休暇取得申請といったものもあります。

一般的には、“私傷病での休職”については、会社から休職発令等がされると思います。就業規則等の休職規定に基づいて、休職の要件を満たした場合に休職が発令されます。そして、休職事由が消滅するか休職期間が満了するまでは、休職が続くことになります。

ところで、“休職”というのは、従業員の労働義務が免除される制度です(だから、休んでも欠勤とは扱われないし、労働義務の不履行とも扱われない)。労働義務がない日については、年次有給休暇を取ることはできません。あくまでも、年次有給休暇は、労働日に対して取るものです。したがって、休職期間中の従業員から年次有給休暇取得の申請があっても、それに応じる必要はありません。

同様に考えられるのが、会社都合で従業員を休業させた日についてです。その日は労働義務がなくなったため、年次有給休暇を取ることはできません。ただし、この場合には、会社は労基法26条の休業手当の支払い義務が生じます。

※ 会社都合での休業については、労基法上は休業手当(平均賃金の60%)を支払えばよいことになっていますが、労働者には賃金100%の請求権があります。たとえ休業手当を支払っていても、賃金100%との差額について、会社には支払い義務があります(使用者の故意・過失または信義則上これと同視すべき事由による休業の場合、民法536条2項により労働者には全額の賃金請求権がある)

では、労災で休業している場合、年次有給休暇を取ることはできるのでしょうか。労災での休業中というのは、「業務上の傷病のために働くことができない状況」ではあるが、労働義務を免除されている訳ではないとされます。

また、行政解釈で「負傷または疾病等により長期療養中の者が、休業期間中に年次有給休暇を請求したときは、年次有給休暇を労働者が病気欠勤等に充用することが許されることから、このような労働者に対して、請求があれば年次有給休暇を与えなければならない」とされています。

したがって、労災での休業中は、年次有給休暇を取ることができます。ただし、年次有給休暇を取れば賃金が支払われるため、その日については労災の休業補償給付は支給されません。

先に話した“休職期間中の年次有給休暇”や“会社都合での休業時の年次有給休暇”と“労災休業中の年次有給休暇”との取り扱いの違いについて、ポイントとなるのが、“休職発令”や“会社都合での休業指示”です。

“休職発令”や“会社都合での休業指示”があれば、労働義務がなくなったと考えられ、その日に年次有給休暇を取ることはできなくなります。

そういったものがない限り、いまだ労働義務はあることになり、年次有給休暇を取ることが可能であると考えます。

結論として、私傷病等での休職期間中については年次有給休暇を取ることができず、労災で休業中であれば年次有給休暇を取ることができるということになります。

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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