核のゴミを「永久」貯蔵する羽目に。山口県上関町の核燃料中間貯蔵施設プランは何がヤバいか?

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8月2日、使用済み核燃料の中間貯蔵施設を山口県上関町に建設するプランを発表した中国電力。町は前向きな姿勢を示していますが、市民団体からは反対の声が上がっています。このプランを「マヤカシ」と断言するのは、元全国紙社会部記者の新 恭さん。新さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で今回、中間貯蔵施設が「永久貯蔵施設」になりかねない理由を解説するとともに、脱原発以外に核廃棄物問題の解決方法はないと断言しています。

すべてマヤカシ。山口県上関町の核燃料中間貯蔵施設プランに見る原子力ムラの往生際の悪さ

原発回帰に前のめりな岸田政権の政策を奇貨として、各電力会社は原発再稼働を急いでいる。だが、原発を動かせば動かすほど、施設内のプールにたまっている使用済み核燃料が増え、満杯になる日が近づいてくる。

満杯になって、持っていき場があるかといえば、残念ながら無い。「トイレなきマンション」とたとえられるように、最初からそんな場所や処分技術が確保されていないからだ。そのうち何とかなると見切り発車したのが、そもそも原子力発電というシステムだ。

そこで、日本政府と電力会社は、できもしないことをできるかのように吹聴してきた。使用済み核燃料を再処理してウランやプルトニウムを取り出し、再び燃料にして原発で燃やす。つまり「核燃料サイクル」だ。この構想の中核である高速増殖炉の開発に途方もない巨額投資をし、あえなく失敗した。それでも、“原子力ムラ”は諦めない。いつまでも“神話”を生かし続けねば、原発温存政策の土台が崩れるからだ。

山口県の上関町に、原発から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設を建設するプランが持ち上がっている。中間貯蔵施設も、核燃料サイクルの一環として考え出されたものだ。

まだ決まったわけではない。中国電力が原子力発電所をつくるために所有していた敷地の一部を活用し、福井県から使用済み核燃料の県外搬出を求められている関西電力と共同で建設するというプランで、上関町に示したばかりだ。

過疎化が進む上関町の町長から地域振興策を求められたのに中国電力が応えたかたちだが、原発建設に反対してきた住民にしてみれば寝耳に水の話で、ましてや高浜・大飯・美浜の3つの原発を福井県内に抱える関西電力の使用済み核燃料の面倒までみるということになると受け入れがたいだろう。

中間貯蔵施設の設置場所が見つからず、どこよりも焦りを募らせてきたのは原発再稼働が進む関西電力だ。高浜3・4号機、美浜3号機、大飯3・4号機の5基に続いて、このほど運転開始から48年も経つ「高浜1号機」が再稼働、9月には「高浜2号機」も再開し、廃炉が決まった4基を除く全7基がフル稼働する見込みだ。

岸田首相は原発政策を大転換し、60年を超える老朽原発の運転も可能にする法律を成立させた。古い原発の多い関電にとっては望みどおりになったといえる。

そこで問題になるのが使用済み核燃料の増加だ。高浜原発では約5年もすればプールが満杯になるといわれている。満杯になると、置き場がなくなり、原発の運転ができなくなってしまう。放射性物質がたまり続けると、当然、地元の不安は高まる。

使用済み核燃料の県外搬出を求める福井県の杉本達治知事に対し、関電は中間貯蔵施設を県外に設けると約束したが、ことは放射性物質にかかわるだけに、受け入れる自治体が簡単に見つかるはずはなく、関電は候補地の提示期限が来ても約束を果たせないまま、解決を先送りしてきた。それだけに、中国電力から共同で中間貯蔵施設をつくろうという話が持ち込まれたのは、“渡りに船”だっただろう。

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