核のゴミを「永久」貯蔵する羽目に。山口県上関町の核燃料中間貯蔵施設プランは何がヤバいか?

 

核のゴミの最終処分場がないという根本的な問題

国は原発から出る使用済み核燃料をすべて再処理にまわすよう義務づけ、これまでは英国とフランスに再処理を委託してきた。だが、いつまでも英仏に依存するわけにはいかないため、青森県六ヶ所村に日本原燃の核燃料再処理工場が建設されたが、試運転段階のトラブル続きで完成に至らず、いたずらに環境を汚染し続けているのが現状だ。

原発からやがて溢れ出すであろう使用済み燃料を、再処理工場に移すまでの間、一時的に保管しておく場所が中間貯蔵施設というわけである。だが、この「一時的」がクセモノなのだ。

東京電力と日本原子力発電が青森県むつ市に建設中の中間貯蔵施設の場合、使用期間は50年間で、操業開始後40年目までに、搬出について協議することになっている。この「協議」というのも怪しい。搬出先である再処理工場の将来が不透明であるからだ。「協議」によっては、いつまでも搬出できない恐れもある。

六ヶ所再処理工場は、3兆円もの巨費を投じながら、さまざまなトラブルを引きおこし、これまで竣工が二十数回も延期されている危ういシロモノだ。いつになったら稼働するかわからない。もともと日本には再処理のノウハウがなく、フランスの協力を得て建設を進めたものの、関係企業個々の利権がからんで一貫性のない設計となったのが災いした。

再処理工場がうまくいかなければ、中間貯蔵施設は「一時保管」ですむはずがない。専門家の中には、「中間貯蔵ではなく永久貯蔵施設になるのではないか」と疑い深い眼を向ける人もいるのだ。

中間貯蔵施設は鉄筋コンクリートの建物で、使用済み燃料は金属キャスクという頑丈な容器に入れられていて、容器から取り出したり、加工したりすることもなく、安全だという。しかし、大量の放射性物質を含む物を長期にわたって大量に置いておくとしたら、何が起こるかわからない。

上関町に中間貯蔵施設が建設されることになれば、むつ市に次いで二例目となる。関電はかつてむつ市の中間貯蔵施設を使用させてほしいと要請したが、地元自治体の反対で断念した経緯がある。

根本的な問題は、核のゴミの最終処分場がないことだ。「核燃料サイクル」計画にしても、再処理によって発生した廃液中の放射性物質を、溶融ガラスと混ぜ合わせた「ガラス固化体」にして最終処分場に埋めることになっている。

それができないため、フランスやイギリスから返還された「ガラス固化体」は、六ヶ所村の「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」に保管されている。

最終処分場の実例としては、米国ニューメキシコ州の核廃棄物隔離試験施設や、フィンランドのオルキルオト原子力発電所に併設されているオンカロなどがあるが、日本では小泉純一郎元首相が見学したこともあってオンカロがよく知られている。

オンカロでは、19億年前にできた岩盤を地下520メートルまで掘り進め、そこから横穴を広げて100年間にわたり核のゴミを埋めてゆく計画だ。それが終わると閉鎖して、無害になるまでなんと10万年も待つのだとか。核廃棄物に含まれるプルトニウムの半減期は2万4,000年で、10万年経過しないと安全は確保できないのだという。

日本では、2000年5月に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が成立し、廃棄物は、地下300メートル以上の深さの地層において、飛散、流出、浸透することがないように必要な措置を講じて埋設すると定められた。

「手挙げ方式」と呼ばれる全国公募が始まり、07年に高知県東洋町が応募したものの、町民の激しい反対で取り下げになった。現在、選定プロセスの第1段階に当たる「文献調査」を受け入れているのは、北海道の寿都町と神恵内村だけだ。

この記事の著者・新恭さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 核のゴミを「永久」貯蔵する羽目に。山口県上関町の核燃料中間貯蔵施設プランは何がヤバいか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け