“お金持ち”港区民の中学生は、修学旅行先シンガポールで「真の格差」を目の当たりにする

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来年度以降の全区立中学校の修学旅行先を海外にすると発表した東京都港区。2024年度はシンガポール3泊5日、区が生徒1人あたり68万円を補助するとのことですが、ネット上では「地域格差」を巡り賛否両論が渦巻いています。この件について、「港区の中学生には思い切り格差を感じてもらいたい」とするのは米国在住作家の冷泉彰彦さん。冷泉さんはメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で今回、生徒らが海外で身を持って感じるべき「格差」を列挙するとともに、港区の補助額が決して高いものではないと判断する理由を解説しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年9月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

悔しい思いをしてこい。港区の中学生が修学旅行先のシンガポールで感じるべき格差

東京都の港区では、区長が、「来年度からすべての区立中学校で海外への修学旅行を実施する」と発表したそうです。初年度の2024年度はシンガポール3泊5日、つまり丸3日半滞在して夜行便で戻る日程で、シンガポール訪問としては十分な期間になると思います。

対象となるのは、区立中学校3年生の全生徒にあたる約760人で、公立中学の全員を対象に海外修学旅行を実施するのは都内初だそうです。

その目的ですが「国際人育成に向けた取組の集大成」だそうで、「海外の現地で対話する経験を味わい、言語の重要性に対して認識を深める」ということで、日本に近い英語圏の国で、治安もよいということが、選ばれた理由とされています。

裏の事情としては、港区は私立中学への進学率が4割以上であり、税収の割には公立中学の生徒が少ないので、この種の予算が計上可能ということが指摘されています。その金額ですが、総額は5億2,000万円で、1人あたり68万円の補助ということです。

このニュースに対しては、「絶望的な格差社会」だという意見がネットでは溢れています。金ピカの港区だから可能な企画で、地方の自治体では逆立ちしてもムリ、そんな印象のようです。

私は大いに結構だと思います。そして港区の中学生には思い切り格差を感じてもらいたいと思います。といっても、「自分たちは港区民だから豪華な修学旅行ができてザマミロ」という格差ではありません。

まず2022年のデータですが、一人あたりGDPが82,807ドルのシンガポールと、その半分以下の33,815ドルに甘んじている日本との「格差」を徹底的に痛感して欲しいと思います。豊かさ、人々の自信、都市の活気、国家としての威信、もしもそこで「格差」を実感したら思い切り悔しいと思って欲しいです。

その上で、かつて日本は世界のトップクラスであったのが、どうして没落したのか、シンガポールはどうして浮上したのか、その成長率の「格差」も痛いほど痛感して来て欲しいです。

人々がどんな生活をしているのか、日本のように夜遅くまでダラダラと会社や酒場にいるのか、それとも夕方以降は家族とともに過ごしているのか、平日は外食の多いのは何故か、そうしたライフスタイルの「格差」も、そこにある「幸福度」などの「格差」も、もっと言えば女性が活躍している実態の「格差」もできれば発見して欲しいです。

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