リクルートの「スタサプ」に学ぶ、予測が通用しない市場でのマーケティング展開法

2023.09.12
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受験対策のみならず、今や老若男女のあらゆる学びのサポート役として知られるに至った、リクルートが運営する「スタディサプリ(スタサプ)」。同サービスはなぜ、ここまでの成功を収めることができたのでしょうか。その秘訣を探るのは、神戸大学大学院教授で日本マーケティング学会理事の栗木契さん。栗木さんは今回、イノベーションに挑む企業を待ち受ける「3つの不確実性」を、いかにしてスタサプが事業成長の機会に転換したかを詳細に解説しています。

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プロフィール栗木契くりきけい
神戸大学大学院経営学研究科教授。1966年、米・フィラデルフィア生まれ。97年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。博士(商学)。2012年より神戸大学大学院経営学研究科教授。専門はマーケティング戦略。著書に『明日は、ビジョンで拓かれる』『マーケティング・リフレーミング』(ともに共編著)、『マーケティング・コンセプトを問い直す』などがある。

リクルート「スタディサプリ」に学ぶマーケティングの不確実性への対処法

イノベーションに挑む企業が、市場で直面する不確実性

企業がイノベーションに挑もうとすれば、市場において不確実性に直面することが避けがたい。ここでいう不確実性とは、行動の主体が自らの行動の先に何が起こるかを、正確には予測できないという問題である。イノベーションを実現しようとするマーケティングは、ほぼ間違いなく不確実性に満ちた海へと漕ぎ出すような行動となる。

この市場における不確実性は3つの局面にわけてとらえることができる。一口に不確実性といってもその有り様はひとつではないのでる。

S.サラスバシーが定式化したエフェクチュエーションの問題空間(Sarasvathy (2008) 訳 pp. 84-94)にもとづけば、その第1は、企業が行動をはじめる前には、未来の市場の状態は完全には予測できてはいないという不確実性である。そして第2は、企業にとって、何が成功を生み出すための鍵要因かも事前にはわかっていないという不確実性であり、第3は、企業にとって、最終的には何が自らの行動の目的になるかも定かではないという不確実性である。

このように、市場と向き合う企業にとっての予測の困難さという問題の対象には、未来の市場の状態(状態の不確実性)、市場での自らの行動が生み出す効果(効果の不確実性)、そして、これらの状態や効果に反応しながら行動を進めていく目的(反応の不確実性)の3つがある。そして、この3つの局面のそれぞれにおいて、企業は自らの行動の先に何が起こるかを、正確には予測できないという問題に直面するのである。

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