チラつく森元首相の影。鈴木宗男「離党覚悟で電撃訪露」の背後に蠢くもの

 

鈴木宗男の行動にすぐさま反応したプーチン大統領

いかがだろうか。冒頭ではロシアを賛美する外交辞令。そのあと「私はロシアの勝利、ウクライナに屈することがない、と私は100%確信をもって、ロシアの未来を信じています」と続き、後半はこれまでいかに鈴木氏が日ロ関係の構築に関わってきたかを自画自賛している。ニュースとして中身があるとすれば、真ん中の部分しかないわけで、そこはどう見ても、ひたすらロシアの勝利を願っていると読める。

鈴木氏は「ロシアとウクライナは停戦すべき」と発言した部分が切り取られたと主張しているが、それはスプートニクに対するこの発言ではない。別のぶら下がり取材に応じたさい、日本の記者団に語った次の発言であろう。

ガルージン次官とは日ロ関係について、あるいは国際情勢について忌憚のない意見交換をしました。私は双方が銃を置く、一にも二にも停戦が一番だ。このことをロシアが主導的な立場で行うべきでないかという話をしました。

この発言は別途、報道されており、鈴木氏の意見が日本国内に全く伝わっていないとは言い難い。

鈴木氏は9月29日(金)にロシアへ渡航するためのビザを受けとり、10月1日(日)に旅立った。秘書が29日の午後5時過ぎに届けを出しに行ったが、党の事務局にはすでに職員はいなかった。仕方なく10月2日の朝一番に届け出をした。鈴木氏は2日に、ルデンコ外務次官、ガルージン外務次官とロシア外務省で会談し、3日にスプートニクのインタビューを受けている。

鈴木氏によれば、今回の訪ロは、北方領土問題に取り組んできた者として、元島民の「生きているうちにもう一回先祖の墓参りをしたい」という思いや、北方四島の周辺で行われる「安全操業」再開への漁民の願いをかなえるための行動だったという。日本の経済制裁へ対抗し、「ビザなし交流」などを打ち切ったロシア政府と話し合いたかったということのようだ。

むろん、それは政治家の表向きの発言であって、ほかに隠された目的があるかもしれない。

だいいち、ビザを受け取ってからでなくとも、計画段階で党に話をつけておくことはできたはずである。鈴木氏は以前にもロシアを訪問しようとして、党本部にストップをかけられたことがある。それにもかかわらず訪ロを強行したのは、離党も覚悟のうえだったのではないか。森元首相とは連絡をとっていたのではないか。さまざまな疑問点が浮かび上がる。

鈴木氏の行動に、プーチン大統領はすぐさま反応した。10月5日、ソチで行わた「ヴァルダイ国際討論クラブ」に出席したさい、記者の質問に対する以下の発言。

日本が関係正常化に関してイニシアチブを発揮するならば、ロシアは協力する用意がある。日本に対して制裁を発動したのは我われではない。この場合アジアへのこの窓をバタンと閉めたのは我われではない。これをしたのは日本だ。

(スプートニク日本語版記事より)

日本が経済制裁をやめ、日ロ関係を以前に戻したいなら、話し合う用意があるということだろう。鈴木氏の行動に呼応し、日本政府に対ロ政策の転換を求めたものといえる。

鈴木氏は、党の了解を得ようとすれば反対されるので、あえて党への届け出を渡航後にした疑いがある。ロシアに到着した翌日には2人の外務次官と会談しており、用意周到にスケジュールが組まれていたことがわかる。スプートニクの取材も予定通りだったのだろう。

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