ネット上にも怒りの声。なぜ日本政府の「邦人救出」はここまで遅いのか?

2023.10.24
Aichi,,Japan,-,March,08,,2016:japan,Air,Self-defense,Force,Boeing
 

1985年のイラン・イラク戦争時の例を出すまでもなく、毎回迅速さに欠ける対応が批判の的となる日本政府の邦人救出。今般の中東における大混乱に際しても、その「体質」に変化がないことが証明された形となってしまいました。かような政府の対応を批判するのは、安全保障や危機管理に詳しいアッズーリさん。アッズーリさんは今回、「政府に国民の安全を守るという強い意志が感じられない」とした上で、このまま政府の体質が変わらないのであれば、台湾有事の際には2万人の在台邦人に多くの犠牲が出るとの懸念を記しています。

なぜ、いつも「邦人救出」は遅れるのか?台湾有事では多くの日本人が退避できなくなる

ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃により、双方の間で戦闘が激化し、既に犠牲者は4,000人を超えている。イスラエル軍はハマスを殲滅するためガザ地区へ地上侵攻する姿勢を崩しておらず、日本の外務省は11日、ガザ地区及び同地区との境界周辺の危険レベルを最も高い4(退避勧告)に引き上げた。

また、イスラエル北部ではレバノン南部を拠点とする親イランのシーア派武装勢力ヒズボラが反イスラエル感情を強め、イスラエル領内へのロケット攻撃をエスカレートさせている。ヒズボラは軍事的にハマスより規模が圧倒的に大きく、イスラエル領土全体を射程に収めるミサイルなども保有しており、イスラエルとの間で攻防が激化すればイランも加わる恐れがあり、衝突規模はガザ地区の比ではないだろう。日本の外務省も18日、イスラエル北部のレバノンとの国境地帯の危険情報を、最も高いレベル4(退避勧告)に引き上げた。

こういった情勢から、イスラエル在住の日本人の間でもイスラエルから退避する動きが拡がっている。近年、中東のシリコンバレーとも呼ばれるイスラエルへ進出する日本企業は増加傾向にあり、駐在員や出張者の数も増えている。今年春には成田と最大都市テルアビブを結ぶ直行便のフライトも始まり、イスラエルと日本の経済関係は結び付きが深まっている。しかし、10月以降政情が不安定になり状況が変わり、日本企業の間でもイスラエル出張を控える動きが見られる。

韓国軍の輸送機に救われた51人の日本人

しかし、拡がっているといってもその動きは他国と比べると鈍い。軍事衝突がエスカレートする中、韓国軍の輸送機が13日にテルアビブに到着し、韓国人163人とともに日本人51人を乗せ出発し、14日夜にソウル郊外に到着した。この件で日本の外務大臣は韓国に謝意を表明し、日本のネット上では韓国の行動を称賛する声が上がる一方、「なぜ日本政府の対応が遅いんだ」、「岸田政権には国民の命を守る気があるのか」など怒りの声が拡がった。

当然のことだが、国家の最大の使命は国民の命を守ることだ。よって、諸外国に滞在する国民の安全を守るため、いち早く行動を取るのは政府の役目である。しかし、7日の衝突以降、イスラエルの国営エルアル航空は10月12日までに、ニューヨークやパリ、ローマやマドリード、イスタンブールとイスラエルを結ぶ臨時便を運航し、外国人の退避で積極的な役割を果たした。ドイツのルフトハンザもイスラエルへ臨時便を飛ばし、チェコは政府専用機で自国民34人を乗せ無事に帰還したと発表した。

また、10日時点で、米国のデルタ航空やアメリカン航空、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス、ルフトハンザ、エールフランス、ハンガリーのウィズエアー・ホールディングスなどが相次いでテルアビブ便の運航を停止するなど、諸外国は情勢悪化に伴い素早い行動に出た。

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