崖っぷちの木原誠二。妻の元夫「怪死事件」告訴状を警察が受理の新展開

 

「明日で全て終わりだ」の一言で打ち切られた再捜査

しかし事件直後に、警察は安田さんの遺族に「自殺」という見立ての説明をしていた。

父はこう悔しがる。「種雄が死んだ翌日の4月10日、事件現場から大塚署へ遺体が運ばれて、翌日には司法解剖を行うと説明がありました。ところが司法解剖が行われる前の10日の夕方にも説明があり、『事件性がない』と担当の刑事に言われました。それが今でも忘れられません」(文春オンライン)

ネット動画番組で発信を続けている検察OBの村上康聡弁護士は、司法解剖より先に警察が自殺と決めつけている点に着目する。自殺と断定できるのであれば、警察はその証拠をつけて検察庁に「送致」すればよい。それでこの件は終わりだ。

しかし、それをしなかったのはなぜなのか。おそらく、警察側は何らかの理由で自殺として処理したかったが、司法解剖による鑑定では自殺と断定できる所見はなかった、あるいは他殺の疑いが濃いという見方が出たのではないだろうか。

このため、警察は送致できず、未解決事件となって宙に浮いた。局面が変わったのは2018年のことだ。大塚署の女性刑事が疑問点に気づいたのがきっかけで再捜査がはじまった。X子さんが自民党の有力な衆院議員である木原氏と再婚していたため、エース級ぞろいの殺人犯捜査第一係が投入される大がかりな捜査となり、事件当夜、現場にいたと見られるX子さんや、その父親の自宅がそれぞれ捜索され、X子さんへの事情聴取が続けられた。ところが、警察は安田さんの遺族に理由も告げないまま、突然、捜査を打ち切った。

X子さんの取り調べにあたっていた佐藤氏も、上司である佐和田立雄管理官(当時)から、「明日で全て終わりだ」と聞いただけだったという。

再捜査が打ち切られたあとも、この一件が検察に送致されることはなく、現在に至っている。露木長官が「事件性はない」と明確に言い切ったのだから、その証拠をそろえて地検に送致するべきなのだが、おそらくは先述した通り、司法解剖の鑑定との食い違いがあるため、できないのであろう。

そこに「警察の苦悩がにじんでいる」と村上弁護士は指摘し、次のように言う。

「あそこで長官が事件性がないと言わずに、被疑者不詳とか、所在不明とか、あるいは捜査中ですといえば、そんなに大ごとにならなかった。長官が終了のコメントを出したため、その理由が見つからずに困っているのでは」

2006年の事件当初、大塚署が捜査に及び腰だった理由は不明だ。X子さんの父が、警視庁の警部だったことと関係があるのかどうかもわからない。だが、解剖の鑑定も待たずに「自殺」で処理しようとしたその初期対応が今も尾を引いているのは確かだ。

事件に決着がつけられず、宙ぶらりんになっていたところに、今年の夏から週刊文春の“木原事件”キャンペーンがスタートした。内閣官房副長官をつとめていた木原氏は岸田首相が頼りにする最側近だ。木原氏は文春の記事を「事実無根」としており、官邸は政権を守るためにも、その主張を支える必要があった。

7月13日の露木警察庁長官の発言は、そういう背景から生まれたものだろう。週刊文春の報道によると、発言の後、露木長官は「火消しをしろ」と警視庁の重松弘教刑事部長に命じたが、その露木氏に「どうにかしてやれよ」と働きかけたのが、木原氏と同じ内閣官房副長官をつとめる栗生俊一氏だった。

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