どの口が言うのか?イスラエルとハマスに停戦を呼びかけるプーチンの魂胆

 

軍事的行動で成果を挙げることしか考えていないイスラエル

先週末から様々なルートや協議のチャンネルを通じて停戦協議の調停努力を続けていますが、対話に応じる可能性を匂わせるハマスに対し、イスラエルは徹底的にハマスを潰すと宣言し、話し合いのチャンスが見当たりません。

とはいえ、トルコやカタール、エジプトなどの協力もあり、非公式な対話トラックは開かれ始めていますが、国内からの強い非難にも対応しなくてはならないネタニエフ首相と政権にとっては、今は軍事的行動で“成果”を挙げることしか考えていないようです(そして残念ながら、それがイスラエルのネタニエフ政権に残された唯一の手段だと考えられているようです)。

この紛争は、もしイスラエル軍が地上侵攻を実施した場合、短くても数か月、恐らく数年単位で戦われることになり、その先にはイスラエル・ガザ・そしてヨルダン川西岸の地域における徹底的な破壊と、想像を絶する犠牲、そして悲劇がまっていることになります。

この状況に対して怒りを禁じ得ませんが、少なくとも今、自身が紛争の当事者となっているリーダーたちにとっては非常の都合のいいことになっていることは紛れもない事実でしょう。

例えば、ウクライナ侵攻の実施から20か月が過ぎたロシアは、国際世論の関心と目が中東に向いていることで、非難の矛先をかわし、国内と同盟国内でのプーチン体制への批判にじっくりと対応する時間を稼ぐことが出来ていますし、対ウクライナ戦線での立て直しと戦略のアップグレードを行っています。

核兵器の使用には至らないものの、これまで温存してきた最新鋭の兵器による攻撃も検討されており、今はその配備が急ピッチで進められています。

これまでならばNATOと加盟国が即座に反応し、ウクライナに対して軍事的な支援を行うことになりますが、イスラエルとハマスの戦いにおいては、ウクライナのケースとは違い、自国民が人質に取られ、期せずして当事者になっていることもあって、どうしても政治的なリソースも、経済的なリソースも、そして軍事的なリソースも対ハマスに投入されることになります。

そのぶん、ウクライナは見捨てられるまでは行っていないかもしれませんが、対ロ反転攻勢とその後についての戦略を練り直さなくてはなりません。

ウクライナ政府の関係者と調停プロセスにおいて話した際には「公言はできないけど、ウクライナにとって今回のイスラエルとハマスの戦いは困った迷惑だ。私たちはこのままだと忘れられることになりかねない。それで利益を得るのはだれか?ロシアだ。それを許さないために、ウクライナは行動を起こし、声を上げ、世界の注意をひかなくてはならない」と述べていたことに、理解を示すのと同時に、個人的にはさらなる紛争の激化を予想させ、背筋が寒くなりました。

ロシアは核保有国であり、恐らくイスラエルも公言はしていなくても核兵器を保有していますが、ロシアにとってウクライナは敵の領地ではなく、“自国の領土”という意識ですし、イスラエルにとっては、パレスチナは“神から授けられた土地”なわけですから、そこに核兵器を打ち込むことは考えられませんが、イスラエルのケースにおいては、実際に中東のアラブ諸国をざわつかせています。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • どの口が言うのか?イスラエルとハマスに停戦を呼びかけるプーチンの魂胆
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け