追加種目
■フラッグフットボール
アメリカンフットボールが起源。タックルをする代わりに、腰につけたフラッグを取る。1チーム5人で対戦。
2020年に小学校の学習指導要領に掲載されたものの、日本の競技人口は約4,000人にとどまる。世界ランキングは、日本は男子が11位、女子が6位。
■ラクロス
「クロス」と呼ばれる網の付いたスティックで、球を操り、ゴールを狙う1904年セントルイス大会、1908年ロンドン大会で実施された。
日本国内では、大学を中心に発展。現在、国内の大学で247、社会人で73のチームがあり、約1万3,000人の競技人口を擁す。
日本代表は、五輪と同じ6人制で争った昨年のワールドカップで、男子が3位、女子が6位となり、世界でも強豪国のひとつ。
■野球・ソフトボール
2021年の東京五輪では、男子の野球、女子のソフトボールがともに優勝。
■クリケット
野球に似た球技で、ボウラー(投手)の投げたボールを、打者が平たいバッドで打ち返す。野球とは違い、360度、どの方向に打っても良い。
インドなど英連邦で高い人気を誇り、昨年開催されたW杯では、世界の12億人がテレビ視聴した。日本の競技人口は約4,000人、世界ランキングは男子50位、女子51位。
1900年パリ五輪では、2チームで実施された。1チーム11人。
■スカッシュ
イギリス発祥。4面を壁で囲まれたコートでボールを交互に打ち合う。アメリカでの人気が高く、日本の愛好者は約30万人。2012年のロンドン大会より、毎年、「有力候補」とされてきた。
(*5)
金権体質、再び
今回の追加種目決定により、“やはり”というべきか、IOCの「金権体質」ぶりが再び、顕在化した。
追加種目決定の裏側は、IOCがインドの巨大市場を狙い、クリケットを強く推し、他方で開催国枠をもつロサンゼルス組織委側が野球やフラッグフットボールなどアメリカで人気の球技を要望し、決定が難航(*6)。
結果、妥協の産物として、選手の数1万5,000人という大枠を破ってしまう。
IOCは徹底的に128年ぶりとなるクリケットの復帰を要望。
イギリスのガーディアン紙によると、インドでの放映権料は、来年にパリ五輪では1,560万ポンド(約28億4,000万円)であるが、しかしクリケットが導入されると、その10倍の1億5,000万ポンドにまで膨れ上がるという。
IOCの関係者は、
「15億人のインド市場はIOCにとって未開拓だ。ここに着手したかった」(*7)
と語る。
しかし、それに「待った」をかけたのが、巨額の放映権を結び五輪に強い影響力をもつ米NBCユニバーサルをお膝元にもつアメリカだった。
IOC側は、男女の人数バランスなどの面で難色を示した野球・ソフトボールをアメリカ側は強く推したほか、アメリカンフットボールのプロリーグであるNFLの選手が五輪の出場に意欲を見せるフラッグフットボールの提案を、アメリカの組織委側が推す構図となった。
そのため、一時は追加競技の決定が、
「無期限に延期された」(米国オリンピック・パラリンピック委員会幹部)(*8)
という異例に事態にまで発展。
結果的に、妥協案として、ロサンゼルスの組織委側に押し切られた形となり、IOC関係者は、
「NFLとNBAのある国でやる五輪はでは仕方ない」(*9)
と嘆く。
しかし近年、IOCは選手数の抑制を掲げてきたが、“早速”、それが裏切られた形になる。
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