3.経済変動しても実質価値を維持して、貧困を防ぐ機能を持つ。
次に年金を受給し始めてもその金額が、将来の経済変動についていかなければとても貧相な給付になりかねません。
前述したように、物価が将来10倍になれば2000万円もらっても200万円の価値になります。
民間保険はその経済変動のリスクには対応できませんが、公的年金は物価変動率や賃金変動率にスライドするので、実質価値を維持する事ができます。
遠い昔、年金制度は積立の年金から始まりましたが、昭和30年以降の高度経済成長を迎え年率10%の賃金の伸び、物価は約5%の伸びが昭和50年ごろまで続きました。物価は平成10年まではずっとプラスでした。
年金はまだ積立の年金だったから、将来は金額的には例えば昭和40年改正時に月1万円を支給しますと決めて、それを目指すための保険料を徴収しました。
ところが経済成長で現役世代の賃金は年が変わるたびに伸びていく事で、年金額と現役世代との給与の差が広がっていきました。
積立金というのは物価や賃金の伸びには連動せずに運用利回りなので、物価よりも運用利回りが低いとどうしても積立金の価値が下がってしまいます。
もし積立のままで年金は月1万円ですって頑なに変えなかったら、現代で大層貧相なものとなり、高齢者の貧困問題で大問題になっていたでしょう。
積立方式では貧困という問題に対応できないため、多くの国が年金の実質価値を維持するための賦課方式に早い段階で移行していきました。
日本も昭和48年改正の時から正式に物価や賃金にスライドする方式に移行しました。
これにより、現役世代の賃金の何%を維持するという形になったのです。
実質価値を維持する形にすれば、今後どれだけ経済成長で物価や現役世代の賃金が伸びても、それに合わせとけばいいですからね。
物価が将来10倍になっても100倍になっても、年金はそれに連動していく。
実質価値を維持するというのは公的年金ならではの強みです。
なお、賦課方式というのは働いてる人の給料から払う保険料を受給者に送る形の方式のため、もし働く人たちの給料(賃金)が上がれば年金も上がる事になります。
賃金が上がるというのはモノに対する需要が増える事になり、物価が伸びていく事にもつながりますが、現役世代の賃金が上がれば年金も上がるので物価の伸びに自動的に対応する事になります。
今の国民年金の満額(20歳から60歳までの480ヶ月間完璧に納めた場合)は795,000円(68歳以上は792,600円)ですが、将来の物価や賃金が変わればこれらももちろん変わってきます。
4.死亡リスクや障害リスクにも対応する。
最後に、死亡したり障害を負った時ですね。
民間保険だと特約やら、別に保険に入る事が必要になるかもしれませんが、公的年金は毎月払っている保険料でこれらもカバーします。
image by: Shutterstock.com