米英がイエメン「フーシ派」攻撃開始。崩れる中東のバランスと進む世界の分断

 

国際秩序の崩壊を決定づけたウクライナ侵攻とガザ紛争

そしてさらに私が問題だと認識しているのは、同じ国であってもケースバイケースで国際秩序や平和、正義(justice)、そして国際人道法に対する定義を使い分けているという国際政治の現実です。

調停グループに参加する国際政治の専門家によると「現在の国際社会はダブルスタンダードどころかmultiple standardsが蔓延っており、スタンダード(基準)を主張する国が、自国の利害に基づいて定義を自在に変えて、自らの行動や言動を正当化する矛盾に満ちた世界だ」と表現しています。

その現実がまさに私たちが目にしている各国のロシア・ウクライナに対する態度、イスラエル・ハマスの戦争に対する態度、そしてアフリカや中南米、アジアで長年続く紛争・戦争・内戦に対する態度(ほぼ無関心)として表れています。

この矛盾に満ちた対応は、一貫した姿勢と認識に基づく対応を阻むだけでなく、ルールを遵守し、相互に利害を尊重し合うという国際協調体制(もしかしたらただの幻想だったのかもしれませんが)を根本から覆し、結果、いわゆる“国際秩序”を崩壊させたのではないかと考えます。

崩壊の兆しはもうずいぶん前からあったのでしょうが、それを決定づけてしまったのが、ロシアによるウクライナ侵攻による世界の分断を経て、現在進行形のイスラエルとハマスの戦争を巡る各国の対応でしょう。

コロナのパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻以前はまだ【自由民主主義】【基本的人権の尊重】【国際人道法の遵守】【武力侵攻の禁止】といった理念が意識され、違いを受け入れつつも、国際社会の安定と平和という朧げな目標の下、国際協調体制が成り立っていたように思いますが、ウクライナ、そしてその後のイスラエル・パレスチナ問題の再燃、世界中で顕在化する格差の拡大などが幾層にも重なり、“明日はきっと今日よりは良くなる”という進歩への信仰が薄れ、“失ったもの・奪われたものをいかに取り戻していくかという実利主義”に基づいた対応が力を持ち出しました。

こじつけとお叱りを受けるかもしれませんが、それがグローバルサウスの台頭であり、ロシアによるウクライナ侵攻の背景にある思想の一つであり、そしてイスラエルとハマスの攻防の背景にあるのではないかと感じています。

グローバルサウスの国々は緩い連帯を示し、相互の国内情勢には不可侵を貫いているという特徴以外に、かつて欧米列強国に蹂躙され、天然資源をはじめとする資産を奪われ、従属させられた過去を繰り返さない・繰り返させないという強い意志が存在します。

これを可能にしたのは、各国の経済発展に伴う経済力の向上と、国際協調の下、進められたグローバリゼーションが与えた国際経済への影響力とつながりだと考えます。

これによりグローバルサウスの国々の発言力が上がり、これまで欧米諸国の身勝手な方針に盲従させられていた過去から脱却し、自国の実利に照らし合わせて対応を考え、毅然とした態度で要求にも対峙するという構図が出来上がっています。

その結果、ロシアによるウクライナ侵攻に対するグローバルサウスの国々の反応は、ロシアの武力侵攻という事実に対しては非難するものの、欧米諸国とその仲間たちが構成し、参加を迫った対ロ包囲網と経済制裁からは距離を置き、ロシアや中国とも、欧米諸国とその仲間たちとも適切な距離を保ちつつ、しっかりと利益を確保するという現実的な戦略を取っています。

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