米英がイエメン「フーシ派」攻撃開始。崩れる中東のバランスと進む世界の分断

 

解決の機会が訪れているにも関わらず放置される「火薬」

同じことはプーチン大統領にも、残念ながらゼレンスキー大統領にも当てはまると、いろいろな情報や分析を総合してみた時、どうしても私はそう感じざるを得ません。

そして新しい国際秩序の構築を模索する際、顧みられない数々の紛争や内戦を解決するための絶好の機会が訪れるにも関わらず、30年以上続き600万人の生命を奪っているコンゴの内戦も、東アフリカのデリケートな安定を根本から覆しかねないスーダン内戦も、いつ再燃するかわからないエチオピアの内戦も、そしてアジアに目を移せばミャンマー情勢は緊迫化し、アフガニスタンは見捨てられ、そして朝鮮半島情勢は緊迫し、タイ深南部(マレーシアとの国境付近、南部のパッターニー県を中心とする地域を指す)のポンドュックとそのライバルたちによる分離独立紛争も、相変わらず放置・無視されたまま、各地域の不安定化の要因として残留し、そして常に紛争の拡大のための火薬として存在する事態が放置されることになります。

各国が安全保障問題や国際秩序を、世界の安定のためのパッケージとして捉えていた協調時代から、各国それぞれの利害・実利の観点から、アラカルト形式で関心を持ち、介入するか否かを判断する傾向を強め、どんどんブロック化し、世界を分断する方向へと導かれることになります。

その結果、“国際秩序”は複数の定義が存在し、それぞれが自らの秩序の正当性を争い合うとても不安定で緊張感に満ちた世界が、今後、生まれることになります。

それを防ぐには、ウクライナなガザの問題のみならず、世界各地で起きている紛争や自身の身近なところで起きうる紛争の種に目を向け、紛争が起こり、拡大し、そして互いに共鳴し合うまえに、その芽を摘んでおく努力をしなくてはなりません。

そのためには関心を持ち続け、世界の不条理から目を背けず、それぞれが出来ることを行っていくことが、安定した国際秩序の構築を可能にし、再び協調の下、平和が訪れる世界を作り出すことが出来ると考えます。

何だか今週号は理念じみたお話になってしまった気がします…。

以上、今週の国際情勢の裏側でした。

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