あまりにも強気なプーチン。露が突きつけるウクライナ戦争「停戦」の恐ろしい条件

 

アメリカ政府に揺さぶりをかけるプーチン

ただポイントは“宛先”はあくまでもウクライナであるのですが、実際にその連絡とオファーを入れているのはアメリカ政府です。

ウクライナによる対ロ抗戦の成否を握るのは、欧州各国ではなく、あくまでも米国政府がウクライナを支え続ける気があるかどうかにかかっているということを、ロシア政府は十分に認識し、その認識をベースにアメリカ政府に揺さぶりをかけてきています。

特に今秋に大統領選挙を控え、ウクライナ情勢において何らかの成果を求めるバイデン政権を揺さぶり、“ロシアとの停戦”を成果としてアピールする後押しをしようというお誘いだそうです。

条件が【対ロ経済制裁の即時解除】【ウクライナを中立な状態に戻すこと】【すでにロシアが編入した東南部4州とクリミア半島、セバストポリ港がロシアに帰属することを公式に認めること】【ウクライナを含むロシア国境地帯の国々からNATOのプレゼンスを消すこと】など、なかなか二つ返事では受け入れない内容になっています。

表向き米国政府はそのオファーを拒否しているようですが、それでも水面下で米ロ間の折衝が続けられ、ロシア・ウクライナ戦争のend gameのシナリオを話し合っているようです。

マクロン大統領はその状況が大変面白くないのと、「2030年までの白紙小切手をロシア国民から得たということを口実に、大統領選後、一気にウクライナに攻勢をかけ、そのまま勢いを保ってバルト三国にちょっかいを出すだろう。その場合、NATO憲章第5条規定に則り、意志に関係なく、フランスも他の加盟国も、自動的に対ロ戦争に巻き込まれる。それに備えておくべき」という警鐘を鳴らしたいのだと思います。

バイデン政権が来年以降も続く場合にはさほど問題にはならないものと思われますが、仮に“もしトラ”・“ほぼトラ”が現実になってトランプ政権の再現という状況になれば、アメリカ抜きのウクライナ戦争という状況が重く欧州にのしかかってくることを、マクロン大統領は予想していると思われます。

リーダーたちが発する言葉が必ずしもすべて理解されているとは限りませんが、その一言一句が下手をすると、不要な憎しみと戦いをまた生み出すきっかけになるかもしれませんし、“誤解”が戦争を作り出すことも多くあります。

3月に結果がでるロシア大統領選挙後、恐らくウクライナに対するロシアの攻撃が激化し、ウクライナはもちろん東欧・バルト三国のNATO加盟国は直接的なロシアの脅威に曝されることになると思われます。

そのような状況が表出する前に、国際社会はガザの問題を終わらせ、未来志向の中東情勢の形を、可能な限り地域の国々による体制を通じて構成しておく道筋をつけておく必要があります。

もしイスラエル・ネタニエフ首相のハードラインがこのままエスカレートの一途を辿り、ラファで虐殺と評される攻撃が実行された結果、沈黙を保ってきたサウジアラビア王国などの中東アラブ諸国が、ついにイスラエルに対して刃を向けることになり、そこに待ってましたとばかりにイランが加わり、親イランの勢力が各地でイスラエルに対する攻撃を激化させることに繋がれば、もう中東地域はもちろん、東地中海も火の海になることが予想されます。

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