あまりにも強気なプーチン。露が突きつけるウクライナ戦争「停戦」の恐ろしい条件

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2月29日にモスクワで行った年次教書演説で、ウクライナへの侵略継続を表明したプーチン大統領。戦況はロシアに傾き始めているとも報じられ、西側諸国は支援疲れを隠せない状況となっています。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、ロシア軍の攻撃にさらされ続けるウクライナ国内の悲惨というほかない現状と、プーチン氏が突きつける「停戦の条件」を紹介。さらに自身のもとに集まってくるさまざまな情報や分析を総合して抱いた「率直な感情」を記しています。

拡大するロシアの脅威と爆発寸前の中東。“2つの戦争”が分断する世界

反転攻勢が行われている間に、実はロシアは態勢を立て直し、今年に入ってから一気に兵力と軍事力そして弾薬数の差にものを言わせてウクライナ国内における支配地域を拡大し始めています。

欧米メディアが挙って取り上げたブチャの虐殺“疑惑”ほどセンセーショナルな取り扱いはされませんが、現在のロシアによる再侵攻により、街はことごとく破壊され、インフラは修復不能の状態に陥り、仮に何らかの形でこの戦争が終わったとしても、ウクライナが国家として成立し、日常生活を取り戻すことはもう敵わないのではないかと思わせるほどの破壊です。

そしてそれは“もの”だけではなく、人の生命も破壊され始めているとの報告を多く受けるようになってきました。2年以上鳴りやまない空襲警報と突然やってくるロシアの精密誘導爆弾がもたらす破壊を前に、ウクライナ市民の健気な精神も崩壊し始めているとの分析も多数あります。

そして60年代・70年代のハンガリーやポーランド、ルーマニアのように「ロシア(ソ連)に抵抗を続けていればきっとアメリカも欧州も助けに来てくれる」という望みも、実質的に何もしてくれず、最近においては見捨てはじめた欧米諸国の姿勢を見て、これ以上ない孤独と絶望を感じ始めているという分析も聞くようになってきました。

「もっと頑張ればきっとロシアの企てを挫き、再び自国を取り戻し、平和の下、暮らせる日が来る」と言って国民を鼓舞し続けてきたゼレンスキー大統領の神通力はかなり衰え、今は戦場を放棄して全世界に支援拡大と継続の行脚の旅に対して、ウクライナ人の心が離れ始めてきているようです。

そして中には「もしかしたら、ゼレンスキーも自身の保身と権力の維持のために、勝てない戦争を、国民の多大な犠牲のもとに続けているのではないか」と言い出す勢力が拡大しはじめています。

「戦争を続けているから」と3月に予定されていた大統領選も、昨年末に行われるはずだった議会選も無期延期を宣言したゼレンスキー大統領ですが、冷静に物事を分析し始めたウクライナ人の中では「このままでは私たちが権利として選んだリーダーではないものが私たちの生命と運命を握るという事態を許すことになる」という声が上がり始め、「せめて信任投票でも行うべきではないか」という意見が増えてきていると聞きます。

国内および前線での士気が下がり始め、そしてリーダーの正統性にまで言及されるようになってきている状況は、これが本当であるとすれば、かなり末期的な状況であり、ウクライナがロシアの勢いが増すにつれて完全に蹂躙されてしまう状況に陥ることを意味します。

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