あまりにも強気なプーチン。露が突きつけるウクライナ戦争「停戦」の恐ろしい条件

 

ウクライナに対して上がる停戦協議に応じるべきという声

そのようなこと、つまりウクライナが敗北するような事態になった場合、それはウクライナの抵抗を支えてきたはずの自由主義・民主主義勢力の敗北に繋がり、アメリカも欧州各国も、その仲間たちも(つまりG7各国なども)その言動の信憑性が問われること繋がります。

そしてそれは、欧米諸国とその仲間たちがロシアによるウクライナ侵攻を受けて声高に叫んだ「ロシア・中国による国家資本主義陣営による影響力拡大の阻止」が失敗し、影響力のバランスがロシア・中国を軸とした陣営に傾き、今や国際経済のけん引役となってきている実利主義陣営、つまりグローバルサウスの陣営もそちらに傾くことを意味するようになります。

2月26日、パリで開催したウクライナ復興支援会議のオープニングで、フランスのマクロン大統領が発言し、すぐに欧米諸国とその仲間たちから反発を喰らった“あの”内容(編集部注:「ウクライナの抗戦を支援するために、NATO諸国とその仲間たちは地上部隊の派兵を含むすべてのオプションをテーブルの上におくべき」との発言)は、その危険性を察知したが故のものだったのではないかとも考えてしまいます。

マクロン大統領の真意は分かりませんが、同様の意見を大統領府の幹部も述べていることから、欧州の雄を自任するフランス政府としては「ウクライナを失ったらロシアは欧州へ影響力を拡大する。まずはそれを未然に防ぐためにあらゆる手を尽くすことが先決ではないか。あくまでも可能性だが、それを否定し、議論の机上に乗せないというのは、責任放棄ともいえるし、それこそプーチン大統領の思うつぼだ」という警鐘を鳴らすことが狙いだったのでないかと感じます。

アメリカ政府、ドイツ政府、そしてNATOは即座にマクロン発言を打ち消し、派兵の可能性はゼロだと言ってのけましたが、それはあくまでもプーチン大統領を刺激しないという狙いだけであり、中長期的な脅威から目を背けているのではないかとさえ思います。

ナワリヌイ氏が獄中死した後、欧米メディアが伝えるほどの反発がロシア国内で起きていないことと、諸機関をすでに掌握しているプーチン大統領が、このまま何もなければ、確実に2030年までロシアの権力のトップに君臨することになることを前提にロシア対策を練っておく必要があります。

その点では隠れた軍事大国スウェーデンがNATOに加盟したことは欧米陣営にとっては心強いことだと考えますが、対ロ有事が本当に欧州で起きてしまった場合、NATOはその憲章に謳われているように協力して即応できるのかを、再度しっかり問わなくてはならないでしょう。

しかし今、欧米諸国、特に欧州各国から聞かれるのは、【ウクライナ政府にロシアとの停戦協議のテーブルに就くべき】という声です。

現在、日に日に戦況がロシアにとって好転してきているという分析があらゆるところからもたらされ、さほど欧米諸国とその仲間たちによるロシア包囲網と経済制裁の影響が見られないという見方が大方である中、確実にプーチン大統領とその周辺は強気の態度に出て、「ロシアの条件を呑むのであれば停戦協議のテーブルに就く用意がある」とか「ウクライナ側がちゃんとすべきことを理解していたら、戦争など即時に終わる」と伝えています。

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