中国やイランだけじゃない。ウクライナへの支援総額の「倍額」をプーチン側に流したEUの大罪

 

各国を徹底的に破壊し占領する。ロシアがウクライナを侵攻する本当の理由

では“本当の理由”とはどのようなものなのでしょうか?

一言で表現すると【ロシアが考える理想的な社会・世界の在り方の追求】です。

それは【新たなソ連の復興】であり、【1940年代以降に旧ソ連が東欧諸国で繰り広げてきたような各国の社会を徹底的に破壊し、占領すること】であり、【それを邪魔する者は手段を択ばずに排除する】という姿勢を指すものと考えます。

これはキーウ郊外のブチャやドンバス地方での残虐な殺戮行為(注:実行者については要検証であることを強調したい)を見れば、手段を択ばず、見せしめにするという手法の残忍さが見えますが、それはロシア軍側で数にものを言わせ、兵士の命を何とも思わずにどんどん最前線に投入していくという戦法にも、目的達成のためには手段を択ばず、残虐な行為もものともしない姿勢が覗えます。

かつてのジョージアへの侵攻や1990年以降実効支配を後押しするモルドヴァの沿ドニエストル共和国(ロシア系住民が大多数を占め、1990年にモルドヴァからの独立を宣言し、1992年からはロシア軍が駐留してモルドヴァによる支配を排除しているモルドヴァのウクライナ国境沿いの地域)への関与をロシア政府が強めていることもその一環ではないかと考えます。

2年前にロシア・ウクライナ戦争が勃発してすぐに、モルドヴァ政府は、ウクライナ政府との合意の下、ウクライナとモルドヴァの国境を閉鎖しましたが、ロシアから無料でエネルギーの提供を受けつつ、余剰の石油や天然ガスを輸出したり、ウクライナ経由で多くの物品を輸入したりするビジネスが栄え、沿ドニエストル共和国の企業が共和国に多くの税を納めてくれていた構造は、独立行政と統治を可能にしていた状況が突如、無くなり、政府は重大な財政難に陥るという事態が生まれました。

ここで非難すべきは、よく見るとロシアのはずなのですが、非難の矛先は憎きモルドヴァ政府に向き「これはモルドヴァ政府による圧力だ」との認識を明らかにして、沿ドニエストル共和国議会はモスクワに保護を要請し、それをロシア外務省も重要かつ優先案件の一つとして積極的に介入する動きを鮮明にするという事態になっています。

今、ウクライナで戦争中のロシアとしては、モルドヴァに派兵して戦端を開くというのは非現実的だと考えますが、昨年末からEU加盟交渉を開始する親欧米のモルドヴァ政府に圧力をかけ、モルドヴァの国内情勢を不安定化させる狙いがあるのではないかと思われます。

これもまたロシアが描く“新しいソ連の再興”というイメージに沿った圧力だと考えます。

もちろん、単純にモルドヴァに圧力をかけ、ウクライナを支援する欧米諸国とその仲間たちの注意と支援をモルドヴァに向けさせ、ウクライナをさらに孤立させるという狙いもあるとは思いますが、私は「ロシアのあるべき姿」に沿った運動ではないかと見ています。

ちなみにウクライナ側はロシアとの戦争をどのように理解し、勇敢に立ち向かってるのでしょうか?

生存のための戦いであることは間違いないのですが、実は旧ソ連崩壊後、ずっと続けている“内なる戦い”の一環でもあると考えられます。

言い換えると今、ウクライナ国民は2つの戦争を同時に戦っていると見ることが出来ます。

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