アメリカにも大きな問題アリ。米中「半導体覇権争い」が炙り出したもの

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2020年以降、世界的な供給不足が続いている半導体ですが、この分野でも米中による熾烈な覇権争いが繰り広げられてるのも、よく知られているところです。そんな現状を詳しく伝える英有力誌の記事を取り上げているのは、海外マーケティング会社の代表を務める大澤裕さん。大澤さんは自身のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』で今回、その内容を翻訳した上で解説するとともに、対立するそれぞれの国の固有の状況を見極める重要さを説いています。

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半導体にみる米中の覇権あらそい

半導体の不足が深刻化しています。

コロナによるリモートワークの影響でPC、モバイル機器などの需要が急拡大したうえに、電気自動車の発展、家電のネットワーク化なども影響しています。いまや半導体はあらゆる分野に使われており、家庭用給湯器でさえ製造できない、というニュースもありました。

半導体の供給は「世界のビッグ3」と呼ばれるメーカー、TSMC、サムスン、インテルの寡占状態です。そしてすでに必要な拡張が行われています。

その半導体分野においても米中の覇権争いが深刻化しています。以下、今週の英誌エコノミストの記事です。

半導体の製造は複雑な仕事である。

 

インテル、サムスン、TSMCといった半導体メーカー自身も、知名度の低い企業が製造した半導体製造装置に頼っている。アプライドマテリアルズ、東京エレクトロン、ASLM、KLA、ラムリサーチが販売する装置は欠かすことができないものである。

 

その半導体製造装置。現在は中国が最大の市場となっている。装置メーカー最大手のアプライドマテリアルズの売上高230億ドルのうち、75億ドルは中国からのものである。ラムリサーチも売上高146億ドルの3分の1以上を占めている(ただし、同社は中国での売上高の一部は、そこで事業を展開する多国籍企業に対するものであると指摘している)。

 

この新たな依存は、特に米国の半導体製造装置メーカー3社にとって、政治的・商業的な問題を引き起こしている。特に、アプライドマテリアルズ、KLA、ラムリサーチの3社は、政治的、商業的な問題を抱えている。

 

中国政府は、国内のチップメーカーに何千億ドルもの資金を投入している。アメリカの3社はそれぞれ、プロセスの異なる段階において優位に立っているため、アメリカの最先端技術が中国の経済目標を促進しているという結論に至っている。

 

米国議会では、これは容認できないということで超党派の強い合意が得られている。

 

2020年12月には、米国政府は中国の大手チップメーカーであるSMICを輸出ブラックリストに掲載した。SMICに製品を売りたいアメリカ企業はライセンスを申請しなければならなくなった。

 

アプライドマテリアルズ社は、「中国から締め出されると国際的な競争相手に対して技術的なリーダーシップを失うことになりかねない。これは他の海外企業の助けになるかもしれない」と指摘した。

 

政治的な圧力も高まっている。3月には、2人の共和党議員がアメリカの商務省に宛てて、中国向けの半導体技術、特に半導体製造装置に関する輸出規制を強化するよう要求する文書を提出した。

 

これに対して、米国のアプライドマテリアルズ社、ラムリサーチ社、KLA社は「最先端の製造に使用しない、あまり高度でない装置は中国に販売してもよいが、より高度な装置は禁止するという実行可能な輸出規制を設定しよう」と努めてきた。そうすれば彼らは中国での収入をある程度維持することができる。

 

この提案は、アメリカの同盟国、特に東京エレクトロンやASMLのある日本やオランダが、自国の半導体製造装置メーカーに同じ輸出規制をかけるかどうかがポイントになる。

 

この問題には世界各国の政府関係者が日頃から知恵を絞っている。その結果、石油や武器の販売を抑制するよりもはるかに厄介な、高度な半導体製造から中国を締め出すという複雑な作業が行われる可能性が生まれたのである。

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