東電「メルトダウン隠蔽」の背後にもいた、舛添氏の逆ギレ弁護士

 

官邸側からヒアリングをしない以上、清水社長の証言がポイントとなる。ところが、先述したように、清水社長は当時の記憶がないというのだ。記者会見における関連の発言内容をいくつか並べてみよう。

田中委員長「清水社長がこの人からこう言われたとはっきり言ってくれればよかったんでしょうが…」

佐々木委員「清水社長が精神的に追い込まれ、細かい記憶がないと周囲の方もおっしゃり、ご本人にも(4時間にわたり)質問したが、よくおぼえておられなかった」

肝心の清水社長が、官邸から指示があったかどうかの記憶がないというのに、どういう判断で「官邸側から炉心溶融について慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される」と、勝手な解釈を報告書に書けるのだろうか。

田中委員長はこう言った。

清水社長は記憶がないということだったが、流れからいくと、なんとなく炉心溶融の問題を含めて官邸とか保安院の意見を聞いた方がいいというようなニュアンスでおっしゃているような感じはしました。

なんとなく」「流れ」「ニュアンス」「感じ」…そんなあやふやなことで「官邸の指示」があったと推認しているのだ。

第三者委は「炉心溶融を東電が隠ぺいしたとは理解していない」と言っているが、その根拠は「官邸からの指示」があったと推認したからである。にもかかわらず、その指示があったかどうかは東電内部で確認できないばかりか、当事者である菅元首相ら、当時の官邸メンバーに問合せすらしていない。

調査報告公表後、東電の広瀬現社長は隠ぺいを認め謝罪したが、「官邸の指示」についての追加調査をする気はなく、第三者委を利用した「免罪符」は持ち続けるかまえだ。

こうしてみると、第三者委は、責任追及をかわしたいであろう東電のために、あらかじめ責任転嫁ストーリーを組み立て、それに沿った証言を得るためのヒアリングをしてきただけではないかという疑念さえ浮かんでくる。当時の官邸メンバーからの聞き取りをして否定されたら、責任転嫁ストーリーが崩れてしまう。それを計算していたがゆえに、菅元首相らへのアプローチを避けたのではないだろうか。

前号にも書いたが、「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長、久保利英明弁護士は「第三者とは名ばかりで、経営者の依頼により、その責任を回避し或いは隠蔽するものが散見されるようになった」と憂慮している。「第三者とは名ばかり」の報告書が、またひとつ加わった、ということであろう。

image by: 首相官邸

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
<<無料サンプルはこちら>>

print
いま読まれてます

  • 東電「メルトダウン隠蔽」の背後にもいた、舛添氏の逆ギレ弁護士
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け