「社員はノルマなんかで縛られたくない」
とはいえ、能力や個性は人それぞれである。結果を出す人と出せない人を、どう評価し、どう処遇するのか。多くの企業では目標管理と称して、社員一人ひとりにノルマを与え、その達成状況で、給与やボーナスを上げ下げする。
日本の会社はノルマがあるのが当たり前になっている。だが、社員はノルマなんかで縛られたくない。それが偽らざる本心だ。
実際、私だって、そんなもんに縛られるのはイヤだ。だから未来工業はノルマを課さない。これも差別化だ。
「ノルマなしだぞ、だからやる気を起こして精一杯働きなさい」という論理なのだ。
(同上)
そもそもノルマを与えて、それを達成したらエサをやるぞ、という発想は、会社が社員を信用していないからだ、と山田さんは指摘する。
未来工業はノルマもないから、売上げを伸ばしても、伸ばさなくても、同じ給料を払いますということになっている。そうすると、売上げを伸ばしている社員から不満が出るだろうという話になる。事実、不満も出てくることもある。
(同上)
「これだけもらっているのだから、これだけやらなけりゃいけない」
この問題に対する山田さんの答えは明快だ。
だが、自主性と自覚のある社員は努力してでも、自分が任せられていることを果たそうとする。そして、そこまでやっていると、やってない社員は非常に気が引けてくる。
それに、社員のなかにも新しい価値観が生まれてきて、やってない社員はこう言われるようになる。
「おまえはやっているやつの働きから給料もらうんだから、やってるやつのほうに足向けて寝るなよ」
つまり、これだけもらっているのだから、これだけやらなけりゃいけないという思いを自然に持てるようにしなければならないということだ。
(同上)
「こんな処遇をして欲しいなら、これだけ成果を出せ」と言われるよりも、「こんなに処遇されているのだから、これぐらいやらなくては」と思う方が、人間の素直な感謝と報恩の感情に根ざしているだけに、はるかにやる気も出る。
同様に、充分な働きができない社員も、自分なりにできることは頑張ろうとすれば、できる社員の不満も和らぐ。そこからチームワークが生まれ、互いの得手不得手をカバーしながら、会社全体としての業績を達成しようというやる気が生まれる。
社員一人ひとりが「オレがオレが」と競争意識を持ち、足の引っ張り合いをする企業に比べれば、段違いの業績につながってくる。