中国危機という「蟻地獄」に日本も引きずり込まれてしまうのか?

 

習政権は10年の任期の4年目に突入しているが、改革の大部分は棚上げとなっている。

 

中国からの資本流出は、一部の投資家が見切りをつけている兆候の1つと言える。目下の失望感は、中国の現状ではなく主に将来の見通しに向けられている。改革の進展が再び約束されない中、成長が失速するという予想が広がっているのだ。

 

疑問視されているのは、いつ失速が現実のものとなるかという時期だけだ。
(同上)

要は、習近平、「改革案は立派だが、口ばっかりで実行していない」というのです。「一人っ子政策」の見直しは、本当にやりましたが。

習主席は当初の大言壮語とは裏腹に、市場に限定的な役割しか求めていないのだ。

 

昨年夏、政府が誘発したバブル崩壊で上海株式市場が急落した際に荒っぽい介入で救済に動いたことでも明らかだが、市場原理への道を明らかに逆行する例がいくつかあった。

 

当局は、証券会社に株式購入を強制し、大口投資家の売りを禁止した上に、市場の混乱は投機筋や報道機関、さらには「敵対的な外国勢力」のせいだと批判した。
(同上)

つまり、WSJは、「習近平はそもそも改革をやる気がない」と指摘している。

習主席は10兆ドルを超える規模の経済のかじ取りで、はるかに複雑な課題に数多く直面している。

 

だが、習主席がこれまでに講じた果断な措置から、同氏が経営工学と国家計画を通じて経済の方向を事実上まだコントロールできると考えていることがうかがえる。その好例が、政府系企業を合併し、さらに強力な独占企業を作り出すという習主席の手法だ。

 

こうした強大な企業への投資を民間企業に認める計画はあまり進んでいない。
(同上)

ここではつまり、「改革を進めるどころか、逆のことをやっている」と。国営企業を民営化するのではなく、国営企業を合併させて、さらに強力にしていると。

状況改善を期待できるような説得力のある説明がないため、投資家はますます厳しい結論に達しつつある。

 

それは、習政権は改革に関しては構想通りに進めることができなくなっている、というものだ。
(同上)

投資家が、「習近平を見放しつつある」ということですね。

欧米企業や投資家の願う改革を習近平は実行していない」

これについて、どう考えるべきでしょうか?

欧米は、中国ではなく欧米に都合のいい改革を要求するので、欧米のいうとおりにやればうまくいくわけでもありません。

たとえば、ソ連崩壊後、新生ロシアは、欧米やIMFの指示に従って改革を断行した。結果は、92~98年、GDPが43%減少という悲惨な結果になりました。しかし、2000年に「欧米のいうことをまったく聞かない男プーチンが大統領になった。するとロシア経済は、以後08年まで毎年平均7%成長しつづけた。ですから、「習近平が欧米のいうことを聞かないのが悪い」とは一概にいえません。

しかし、一方で「中国経済が外資によって成長してきた」というのもまた事実。外資を失望させ、外資が逃げ出せば、中国の成長も終わってしまいます。WSJの記事は、「習は外国企業や外国投資家を喜ばせる政策をしないので、失望され、企業や外資が逃げ出している」という事実を指摘しています。

というわけで、中国経済、ますます危機は深刻化していきそうです。そして、世界も引きずられて厳しい時代に突入にしていきます。私たちも、がんばって、乗り切っていきましょう。

image by: Wikimedia Commons

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝の無料メルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。
<<登録はこちら>>

print
いま読まれてます

  • 中国危機という「蟻地獄」に日本も引きずり込まれてしまうのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け