【日中韓】かつての敵を総立ちさせた安倍演説に学ぶ、未来志向の和解とは?

 

そして、「和解」とは、「争いをしている当事者が互いに譲歩しあって、その間の争いを止めることを約する契約」のことです。

和解には、歴史の事実を重視する学問的態度、フェアな姿勢が必要です。それは戦争に勝った側のみの政治的要求が無条件に認められるということであってはならない。それでは「和解」になりません。

現在を生きる日本人は、父祖の歩みを「野蛮な侵略」と決めつける前に、かつて日本ほど人種の平等をはっきり英米はじめ国際社会に求めた国があったかを想起すべきです。

無論、日本の戦争目的はそれだけではありませんでしたが、日本が必死になって不平等な人種的偏見に立った白人の旧秩序に反抗挺身している間に、ついに歴史の歯車が回ったということはたしかな事実でしょう。

どんな民族、どんな国でも自らの存在理由を信じています。約めて言えば、戦争とはそれを確認し拡張する欲求として究極的に生じるものです。もちろん、だから戦争は許されるなどと言いたいわけではありません。

戦後70年の歳月は、世界の人々にいかなる時間を与えたか。少なくとも日本人にとっては、単純な善悪二分法で父祖の歴史を決めつけるのは妥当かどうかを疑う時間にしたいものです。

勝者に押しつけられた思い込みを諾々と抱き続けていては、複雑な歴史の事象を認識できなくなるばかりか、本当に必要な教訓からは遠ざかるばかりでしょう。自ら正当と信じる主張をすることは、決して自らを甘やかすことと同じではない。

「村山談話が出てから今日まで、歴史問題で日韓・日中関係がいろいろガタガタすることはなかった」

これは安倍批判を繰り返す村山富市元総理の言葉ですが、明確に事実に反しています。

村山談話発表から3週間もたたない(平成)7年9月3日、中国の江沢民国家主席(当時)は演説で、次のように強調した。

「ここ数年、日本では侵略の歴史を否定し、侵略戦争と植民地支配を美化しようとする論調がしばしば出ている。日本は真剣に歴史の教訓をくみ取り、侵略の罪を深く悔い改めてこそ、アジアの人民と世界の理解と信頼が得られる」(略)

この年11月、江氏と韓国の金泳三大統領(当時)がソウルで会談し、共同記者会見を開いた際には、金氏は歴史問題に関してこう言い放った。

「この際、(日本の)態度を必ず改めさせる」

韓国は、中国との間にも朝鮮戦争の際の中国軍の大量介入など清算されていない歴史問題があるにもかかわらず、中国を表立って批判しようとはしない。

いずれにしろ村山談話の発表後、日中・日韓間の歴史問題が収まったという客観的事実は見当たらない。日本のメディアが政治家の歴史をめぐる発言を問題視して中韓両国にご注進し、その結果、国際問題化するというパターンは現在まで何も変わっていない
(平成27年4月24日付産経新聞【阿比留瑠比の極言御免】「村山談話は役に立ったのか」)

「和解」の意味を知らず、あるいは、知っていてもそれを求める気のない相手にいくら謝罪や補償を重ねても、それは未来に繋がる関係構築にはならない

日本人が取り戻すべきは、この当たり前の判断です。

image by:自由民主党

上島嘉郎@ジャーナリスト(『正論』元編集長)

『三橋貴明の「新」日本経済新聞』より
経済評論家・三橋貴明が責任編集長を務める日刊メルマガ。三橋貴明、藤井聡(京都大学大学院教授)、柴山桂太(滋賀大学准教授)、施光恒(九州大学准教授)、などの執筆陣たちが、日本経済、世界経済の真相をメッタ斬り!日本と世界の「今」と「裏」を知り、明日をつかむスーパー日刊経済新聞!
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