またも教師の「いじめ隠蔽」が発覚。改めて問われる指導者の資質

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学校と教育委員会の隠蔽体質が大問題となった滋賀県大津市のいじめ自殺事件。この痛ましい事件が1つのきっかけとなって2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」をご存知でしょうか? 無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、もう二度と悲劇を繰り返さないために決められた法律であるにも関わらず、未だ隠蔽体質が改まらない学校や教師が数多いという現実を厳しく批判しています。

いじめの隠蔽で懲戒処分

2月23日に、いじめ隠蔽を指示した中学教諭が停職6か月の懲戒処分を受けたというニュースが流れました。

報道によりますと、この教師は、いじめを受けて大けがをした中学1年の男子生徒を病院に連れていく教師に対して「階段で転んだことにしろ」と隠蔽の指示したことが発覚しました。

被害生徒は、昨年7月、運動部の先輩からいじめられ、胸の骨を折る重傷を負いました。部活の顧問を務める教諭は、副顧問からの「部員の男子生徒が先輩部員2人に暴行された」という報告を受け、病院には「階段で転倒した」と虚偽の説明をするよう指示。被害生徒は全治1か月と診断されましたが、教諭の指示をそばで聞いていた被害生徒本人も、病院では虚偽の説明をしたということです。その日のうちに副顧問は、学校側に「いじめによるけがだった。教諭から虚偽の説明を指示された」と報告。学校側は教諭に対し、翌月の近畿大会への先輩部員の出場を禁じたが教諭はこれを無視し出場させたとのことです(2016年2月24日付読売新聞などを参考に)。

また別の報道では、この加害者たちは、以前にも下級生に対して数ヶ月にわたり、いじめや暴力を繰り返していたことが判明しているようです。

過去、いじめを隠蔽したことによって教師が、懲戒処分を受けたというニュースは、ほとんど見たことがありません。今回、いじめ隠蔽に基づく懲戒処分がなされたこと自体、画期的なことであり、この判断をした姫路市の教育委員会の英断を頼もしく感じます。

しかし、まだ十分とは言えないとも思います。

まず、本件のような重大事態が発生した時には、教師にはやらなければならない責務があります。「いじめ防止対策推進法」には、学校はいじめが犯罪行為である場合には警察と連携して対処すること、児童生徒の生命、身体などに重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに警察に通報することが規定されています(同法23条6項)。つまり、被害者を病院に運ぶと同時に、教師は、校長や教育委員会に報告すること警察に通報しなければならないということになります。報道からはわかりませんが、まさか、まだ警察に通報していないなどという恥ずかしいことが起きていないことを期待したいと思います。

次に、今回の停職6か月の懲戒処分についてですが、これが適正かどうかということについても再検討すべきことだと思います。「処分が重すぎる」という意見もあるようですが、例えば「教師が飲酒運転」をすれば多くは一発で懲戒免職という事例は数多く報道されています。さらに、女性のスカートの中を盗撮したことで懲戒免職になったケースも跡を絶ちません。公務員の犯罪告発義務(刑事訴訟法239条2項)に反する行為と言えますし、犯人隠避罪のおそれもあります。なにより、いじめられて不登校になったり、自殺してしまうような状況がある中で、「いじめを隠蔽した教師」に対しての「懲戒」があまりに甘すぎるように感じられます。

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