他人の体臭を不快に思うか、思わないかは、あなたがその人を仲間と認識しているかいないかに左右されていた? 匂いへの認識に関する、とても興味深い米最新研究結果をご紹介しましょう。
同じグループの人は「良い匂い」
皆さんは満員電車の中や、海外に出かけたときなどに、他人の体臭が気になったことはありますか?
人によってその人の体臭が「良い匂い」か「嫌な匂い」かの判断は変わってきます。
では、なぜそのように同じ匂いでも受け取り方が人によって異なるのでしょうか?
Scientific American誌が、2月、その意外な理由について報じました。
米国科学アカデミー発行の機関誌「PNAS」に掲載された研究結果によると、対象の人物が自分にとってin-group(内集団)かout-group(外集団)であるかの認識によって、他人の体臭を不快に思うか、そうは思わないかの線引きがされるとのこと。
同研究では、英サセックス大学の45人の女学生を対象に使用済みのTシャツを持たせて、その匂いがどれくらい不快に感じられるかを調査しました。
実験対象の学生たちは、フェロモン認識に関する調査だと説明されて実験を受けています。
そして研究者は、そのTシャツが「ライバル校の学生によって使用されたものである」と学生に認識させたパターンと、「同窓生によって使用されたもの」であると認識させた場合と、「何も事前に情報を与えなかった」場合の3パターンで調査を行いました。
すると、「同窓生によって使用された」と認識させたケースでは、残りの2パターンよりも学生たちが不快に感じたと報告する数が少ないという結果が出たそうです。
つまりこれは、匂いを感じるという身体的な要因によるものではなく、対象がin-group(内集団)であるのか、それともout-group(外集団)なのかという、認識によって不快度が左右されている可能性が高いということになります。
同誌は、もしこの研究結果が確かなものであった場合、人種差別などの研究を行う社会科学の分野にも大きな影響を与える可能性があると説明しています。
「もし、ある人物を生理的に嫌っていたとしても、同じ集団の中で人間関係を構築させることによって、不快に感じる程度を下げる事ができるのかもしれない」と、研究者は述べています。
体臭に関する研究はいろいろなところで取り上げられ、それが遺伝子の判断によるものだという意見もありますが、今回の研究ではあくまでも個人の認識という後天的な要因が左右しているという結論でした。
「匂いの捉え方」は私たちが日常生活で感じる不思議のひとつ。
今後の研究で、その謎が解明される日がもうすぐやって来るかもしれません。
image by: shutterstock
source by: Scientific American , PNAS
文/長塚香織