「だって、食べるのが面倒くさいじゃん。 剥いてくれたら食べるけど」
正直言って僕は愕然とした。 だってそうでしょう? カニというのは、身を穿り出しつつ味わうのが最大の醍醐味なのであって、あれがきれいに身だけにされて丼に山と盛ってあったら、ちっともうまくないのである。
少なくとも僕なら、食べる気が失せてしまう。 カニ缶じゃないんだから。
東海林さだお大先生のエッセイに書かれていた枝豆の話にも賛同したい。
枝豆は、さやを指で押してさやがまとった塩味とともに、香りを楽しみつつ味わうのが最大の醍醐味であって、カニ同様にさやから全部取り出された身だけを器に盛ってスプーンで食べたってうまくも何ともないのだ。
そう思いませんか?
今は夏真っ盛りである。 ゆで上げたアツアツの枝豆をつまみにビールを飲む、というのが酒飲みの夏の楽しみである。
できれば浴衣にうちわという姿で、縁側なんぞに座ってこれをやると、ああ、夏だなぁ、という風趣が湧くのだ。
その時の枝豆が身だけにされて丼に盛ってあり、スプーンですくって食べたら全然夏の風情がない、と感じるのは僕だけだろうか?
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『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』より一部抜粋
著者/飯塚玲児
温泉業界にはびこる「源泉かけ流し偏重主義」に疑問を投げかけた『温泉失格』の著者が、旅業界の裏話や温泉にまつわる問題点、本当に信用していい名湯名宿ガイド、プロならではの旅行術などを大公開!
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