なぜ富士フイルムは「本業」が崩壊しても業績は好調なのか?

 

地域でも事業組み換えで成功

事業の組み換えは企業だけではない。伝統工芸や地域の名産を持っていた地方も新たな事業の組み換え、高付加価値化をはかり見事に行き残っているところがある。たとえば新潟県の燕三条である。同地域は1960年代まで洋食器の街として栄えた。しかし、1970年代に入ると日本の輸出が増え円高に襲われた。手をこまねいて円高に悲鳴をあげていた企業は次々と潰れていったが、いくつかの企業群は洋食器に見切りをつけ、伝統の刃物の高付加価値化に目をつけた。

いまや単なる包丁ではなく、レーザーを使ったカット技術などを進化させているし、岩手の鉄びんなどもコーヒーポットにしたり、カラー化を考え、欧米に輸出し人気となっている。

自主事業を柱に、たんなる買収はダメ

かつての技術、製品を細々と受け継ぐだけでは時代遅れになり衰退化していく。そんな時、新しい技術、デザイン、使用法の変化などを工夫すると、再び光を取り戻す可能性もあるのだ。旧くなった産業にこだわりリストラや安売り競争に走っていると先は短い。買収や提携で事業の組み換えや次元の異なる高付加価値化、新しい市場の開拓などを行い、事業の組み換えを考えていくことが重要なようである。

ただ買収といっても、自分たちの事業と無関係の買収を行っても長続きはしないだろう。あくまでも自主技術を軸に、深堀りしているところが成功の確率が高いようだ。

(TSR情報 2016年8月29日)

※なお、ブログには南部鐵器のメーカー「岩鋳」社が手掛けるカラーポット「IWACHU」の画像を合わせて掲載しております。ご興味をお持ちの方は合わせて参照ください。

時代を読む

image by: Wikimedia Commons

 

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