ようやく世界で「海苔」ブーム。実は外国で嫌われモノだったそのワケは?

2016.10.07
 

ブームの影に、研究者が栽培方法に警鐘を促す?

ただ、国連大学の科学者がこの海苔ブームの栽培方法に警鐘を鳴らすコメントを発表しています。

イギリスにあるスコティッシュ・アソシエーション・フォー・マリーンサイエンスSAMS)に所属する海洋生物学者のエリザベス・コッティエールクック氏は「日本や韓国、中国、インドネシア、フィリピンといった多くの国々は、何百年もの間、海苔の農業経営で利益をあげてきました。それも非常に良いやり方で。この経営によって貧しい田舎の地域に多大な収入をもたらすことができたのですから」と長期間に渡って行われてきた海苔の農業方法を称えています。

加えて、ここ10年、海苔が主に消費されてきたアジアの国以外、例えばカナダ、アメリカ、スコットランドといった国にまで、新しいマーケットを広げてきました。 

そう、その繁殖方法が簡単なゆえ、インドネシアやフィリピンの原種が今では30を超える国にて繁殖するまでに至ったのです。

コッティエール−クック氏も「繁殖方法は非常に容易」であると語り、海苔を切り、その切った一部分を世界中のどこに移植したとしても、適した温度が保たれる限りはどこでも養殖が可能ということなのです。

ただ、その繁殖しやすいからこそのリスクがあることを忘れてはいけないと警鐘を鳴らしました。

それは新しい場所に、原種だけでなく害虫や病原菌までもが「ヒッチハイク」されてしまうということです。

また他の作物と同様にグローバルな規模で行われている単一栽培方法は注意する必要があります。

2011年から2013年の間にフィリピンにて「アイスアイス病」(ice-ice disease)といわれるバクテリアの感染が、海苔の栽培に生じてしまったのです。

その名が示すとおり、この病原菌に感染すると感染した部分が漂白し、さらには凍結してしまい死に至るのだそう。

また、その損害額は310万米ドル(約3.2億円)というのだから、この期間の打撃は計り知れません。

海苔の品種自体に生物学的多様性がなかったため、この病気にかかることは根の深い致命的な問題となりました。

「水路によってものすごい速さで全作物を失ってしまうのです。これらの作物はクローンですから。そして、全ての農場では同品種であることによって、ひとつでも感染してしまえば全て感染してしまうのです」と言葉を続けます。

国連は、このクライシスを引き止めるために、他産業の業者からも彼らが苦労して手に入れた教えを海苔の農場経営者達にも取り入れるべきだと薦めているそうです。

前述したコッティエール-クック氏も、バイオセキュリティーの改善だけでなく、遺伝子構造が異なる品種を大量に生み出していくことが求められていると言います。

栽培方法、経営方法共に課題を抱えながらも今後も伸びしろがありそうな海苔ビジネス。

 

日本人にとっては海苔は古風で保守的なイメージのある身近な食べ物ですが、外国人のフィルターを通してみるととてもクリエイティブに見えますね。

これを機に新たな海苔の魅力を発見することができそうです。

周りでまだ海苔が苦手な「時代に追いついていない」外国の人がいたら、この魅力を伝えてあげてください。

image by: shutterstock

source by:PRI

文/臼井史佳

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