ブランドは人の脳をも支配する
2004年の学術誌『Neuron』に掲載された、ベイラー大学のマクルーア博士とモンタギュー博士が発表した論文に面白い実験があります。その実験では、コカ・コーラブランドを提示して被験者にコーラを摂取させた場合と、ペプシブランドを提示して被験者にコーラを摂取させた場合での脳の活動の違いを測定しました。
実験の結果、コカ・コーラを提示した時にだけ反応し、ペプシでは反応しなかった脳の部位があることが分かりました。それは背外側前頭前皮質という脳の部位です。脳深部の海馬という記憶を司る部位と連携し、物事の判断を司っています。
実験では、コカ・コーラを提示してコーラを飲んだ時だけ背外側前頭前皮質が顕著に反応したのです。このことから、被験者は「コカ・コーラは美味しい」という判断を無意識に行っていたことが分かりました。これはコカ・コーラのブランドの力でしょう。味そのものというよりも、「コカ・コーラ」というブランドがコーラを美味しくしていたのです。
独自の製造・流通システムで世界を支配している
コカ・コーラ社のビジネスモデルは「飲料の製造販売フランチャイズチェーン」です。「コカ・コーラシステム」とよばれる生産・流通システムを採用し、コカ・コーラ社とフランチャイズ契約しているボトラー社に製品製造と販売を担ってもらい、コカ・コーラ社は原液の製造と販売、商品開発やマーケティング戦略の策定などに特化しています。
ボトラー社は、コカ・コーラ社が経営権を持たない独立資本の企業がほとんどです。ボトラー社に製造や流通、販売を担ってもらうことで、コカ・コーラ社は設備投資や流通網構築にかかる資金と時間を抑制することができます。また、ブランド構築やマーケティングに力を入れることができます。
日本では、日本コカ・コーラがコカ・コーラシステムを展開しています。ボトラー社や関連会社に原液を供給しています。日本市場のマーケットニーズの分析や製品開発、マーケティング戦略の策定も行っています。
日本はコカ・コーラ社にとって世界戦略における重要市場の一つと捉えられています。日本コカ・コーラは茶やコーヒーといった非炭酸飲料の販売比率が高く、コカ・コーラ社はその成功事例を他の国でも行うようにしています。
日本コカ・コーラが、コカ・コーラ以外の飲料でも成功を収めることができたのは、同社が持つ高度なマーケティング手法を活かした商品開発を行っていることが大きいといえます。
もちろん、商品開発やマーケティング戦略を策定する上で、ボトラー社との協力なしに成功を収めることはできなかったでしょう。ボトラー社との協力の上で、日本コカ・コーラの持つ高度なマーケティング力により、マーケットニーズに合った商品開発を行ってきました。結果として、コカ・コーラのみならず、多くの飲料で成功を収めることができたのです。
日本コカ・コーラは、ジョージアや爽健美茶、アクエリアス、綾鷹、紅茶花伝といった数々のヒット商品を生み出していきました。日本コカ・コーラが商品開発とマーケティング戦略に集中できるビジネスモデルを構築できたことが功を奏したといえます。
日本コカ・コーラをはじめとしたコカ・コーラのビジネスモデルは、世界中の多くの企業の参考事例となっています。企業がブランド力を高める上でのベンチマーク(指標)となっています。コカ・コーラは卓越したブランド戦略を行っている企業といえそうです。
image by: Lukas Gojda
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著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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