中国が日本の「港」を爆買い。豪華クルーズ船は「宝船」になるか?

 

一方で課題も数多くあります。煩雑な入国審査や受け入れ態勢の未整備、免税店の不足、環境の問題などが挙げられます。例えば、奄美大島・龍郷町では、中国人クルーズ客向けのリゾートパーク構想が地元住民の反対で白紙となりました。

龍郷湾を守る会によると、米国大手のロイヤル・カリビアン・クルーズ社が龍郷町に港湾施設や観光施設を建設し、世界最大級のクルーズ船を上海、奄美大島、九州、北京の日程で運行する計画を立てていました。クルーズ船は22万トン級、全長363mが想定され、世界最大級の原子力空母ニミッツ級10万トン、全長330mよりも巨大なものです。

龍郷町の住民は約6,000人です。クルーズ船が寄港した場合、中国人を主とした約5,400人の観光客と約2,100人の乗組員が押し寄せることになります。環境破壊や生活環境の悪化、人的な受け入れ態勢の未整備といった理由により受け入れは不可能といいます。

このことは、訪日クルーズ旅行における問題点を浮き彫りにした出来事だったといえるでしょう。訪日クルーズ旅行の需要は急激に高まっていますが、ソフトとハードの両面が追いついているとはいえない状況です。

しかし、こうした問題点を解決することができれば、訪日クルーズ旅行は日本経済回復の起爆剤になる可能性があります。政府が掲げる「地方創生」の実現も可能です。港湾周辺地だけでなく、内陸部の観光地にまで観光客を引き込むことができれば、ショッピングに限らず、食事や宿泊といった消費活動が広まり、地元経済の活性化に繋がります。入港料や着岸使用料といった税収の伸びも期待できます。

政府はクルーズ船による訪日外国人旅行者数の急増に対応するために、2016年7月に改正港湾法を施行しました。旅客施設等の建設に無利子貸付制度を適用するなど、クルーズ船寄港促進のための環境整備を進めるなどしています。

日本のクルーズ産業は緒に就いたばかりです。課題は山積しています。一方、クルーズ船は財宝を積んだ宝船といえます。クルーズ時代の到来は、日本の観光立国化に大きく貢献する可能性を秘めているといえそうです。

image by: wdeon / Shutterstock.com

 

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著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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