大ヒットとなったスマホゲーム「ポケモンGO」。そのヒットの要因には「ポケモンがまるで目の前に存在している」かのように画面上に表示される「AR」という技術に拠るところが大きかったと言われています。一方、「Playstation VR」の登場で話題を集めている「VR」は、発売当初からマスコミなどでも取り上げられていますが、この両者の違いとは具体的に何なのでしょうか? 日本バーチャルリアリティ学会会長である東大大学院教授の廣瀬通孝さんが、まぐまぐの新サービス「mine」で無料公開中の、廣瀬さんの記事の中で、両者の知られざる歴史を紹介しつつ、それぞれの違いと今後の方向性について解説しています。
複合現実感の世界 ーリアルとバーチャルは対立しないー [世界VR史]
今回はVRと並んで注目されているARにかかわる話題である。VRとARは違うのか? 同じという人もいるし、違うという人もいる。
ところで、「リアルとバーチャルの区別がつかなくなったらどうするのだ」とは、VRの初期によく言われたことである。この言葉の裏には、両者は対立概念であり、相容れないものだという考え方がある。
しかし、本当にそうだろうか? 何年か前、山で遭難しかかった登山者が携帯電話で助けを求めてきたという。今や純粋なリアルなど、どこにも存在しない。
リアルとバーチャルは対立概念でなく、お互いにつながっている、と述べたのは、トロント大学のP.ミルグラム教授である。彼は、純粋なバーチャルとリアルをつなぐ線をひき、その間にAR (Augmented Reality:ほとんど現実の世界にバーチャルな世界を合成したもの) とかAV (Augmented Virtuality:ほとんどバーチャルな世界に現実の世界を合成したもの) とか、様々な中間概念が存在するとした。そしてその全体を「複合現実感 (MR: Mixed Reality) の連続体」と呼んだ。1990年代も中ごろの話である。
したがって、MRやそれに含まれるARなどの言葉はVRから派生してきた言葉である。したがって、ARはVRの弟分といってもよい。