森友学園騒動で議論を避けられた「戦前回帰」の重い空気

 

森友問題を端的に言えば、教育勅語を暗唱させる大阪の学園に総理夫妻が入れ込み、それを学園側が宣伝や交渉の手段として用いたために、自民党右派はもちろん、安倍総理とつながりの深い維新の政治家も同調し、財務省、大阪府の役人たちが異例の特別扱いで新設小学校開校へ動いたということであろう。

豊中の市議がこの件の国有地払い下げについて情報開示されないことに不審を抱き、開示を請求したのがきっかけで、問題が明るみに出たが、それがなければ、おそらく小学校は開校し、昭恵夫人は名誉校長のままだっただろう。

そうしたことを無視して、籠池夫妻だけをウソつきの悪者に仕立て証人喚問の信憑性を下げようと躍起になっているのが、官邸と自民党であり、この問題で政権を追い込もうとする民進党の議員を攻撃するのに血道をあげているのが一部のメディアや、ジャーナリスト、政治家である。

一例をあげよう。どういうわけか、民進党の辻元清美議員が、産経新聞、維新の足立康史議員、ジャーナリストの山口敬之氏ら、いわば「安倍サークルの槍玉にあがったのである。

公開された昭恵夫人と籠池諄子副園長のメールのやりとり。そのなかで「安倍サークル」の面々が着目したのは3月1日、諄子氏から昭恵氏に送られたショートメールのこの部分だ。

「辻元清美が幼稚園に侵入しかけ 私達を怒らせようとしました嘘の証言した男は辻本と仲良しの関西生コンの人間でしたさしむけたようです」
(原文のまま)

辻元議員が幼稚園に侵入しようとしたとか、作業員を小学校建設現場に送り込んだとか。本筋とは無関係のしかも意図や意味のよくわからないメールの内容をもって、足立議員はツイッターで、山口氏はフェイスブックで辻元議員に説明を求め、民進党の対応を批判した。だいたい、そんなことをして辻元氏に得することが何かあるだろうか。

驚くべきは産経新聞の対応だ。3月28日の「民進・辻元清美氏に新たな『3つの疑惑』」と題する記事で、このメールの内容を取り上げ、辻元氏に質問状を送った。

民進党が「誤った内容だ。法的措置も含めて対応を考える」という抗議文を産経新聞に送ると、同紙の石橋文登政治部長が「恫喝と圧力に屈しない 民進党の抗議に反論する」という記事を掲載した。

「民進党の皆さんは、なぜ政権を失い、なぜ今も国民に見放されたままなのか、まだお気づきになっていないようだ」と、まるで安倍総理の発言のような書き出しではじまる文章。その結びはこうだ。

もっとも問題なのは、民進党の隠蔽体質であり、恫喝体質である。自由で民主的な社会を守るためにも屈するわけにはいかない。蓮舫氏の「二重国籍」疑惑も含めて今後も政界の疑惑は徹底的に追及していきたい。

何と大げさな言いぐさか。森友問題の本質から全くかけ離れたどうでもいい真偽を問題にしてどうなるのか。法的措置をとるという民進党も大人げないが、これを安倍政権の隠蔽・恫喝体質に寛容な産経新聞の、しかも安倍首相ときわめて仲のいい政治部長が、「民主的な社会を守るためにと誇大な論陣を張るのは、なんとも滑稽なことである。

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