なぜ警察のセコい取り締まりは減らないのか?「道交法」の異常な実態

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以前、「白バイ警官がノルマを暴露。交通違反で「反則金」を稼ぐ裏事情」という記事で、交通違反を取り締まる警察官に実はノルマが課せられているという裏事情をご紹介しましたが、他にも疑問点はいくつかあるようです。メルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』の著者で中部大学教授・武田邦彦先生は、警察がしっかりと説明責任を果たしていない「道路交通法」の異常さに疑問を呈しています。

交通事故が増える要因にもなる「酒気帯び運転」の曖昧な定義

かつて交通戦争と言われた時代は、1年間に死者が1万人、負傷者が100万人を越えていました。人生は80〜90年ですから、日本人は一度の人生のなかで必ず一度は交通事故で負傷するという状態でした。それが死者4000人を切るまでになったのです。

それでもまだ、最近では自転車の乱暴運転や、スマホを見ながら赤信号をゆっくり渡る歩行者などの問題がありますが、ともかく交通事故死亡者が激減したことは素晴らしいことでしょう。

ところで、警察が点数稼ぎに取締をしている」という感覚は広く国民の間で信じられています。たとえば、一時停止を取り締まるのなら、停止標識や停止線のところに警官か、あるいは交通整理の人を立たせれば事前に一時停止違反を防ぐことができるのに、わざわざ一時停止線から見えないところに警官がいて一時停止しなかった車両を捕まえるのですから、現代の日本の中でもその異常さは際立っていると言えるでしょう。

しかし、このままこのような野蛮な取り締まりによって交通事故をさらに減らすのは難しいのではないかという、まともな考えも出てきています。現在、警察が進めている対策の中で奇妙なものは、1)酔っ払い運転、2)後部座席のシートベルト着用、3)バスの優先走行、等があります。

酒気帯び運転(「酔っ払い運転」とは定義が違う)は呼気中のアルコール濃度で検出されますが、日本は0.15mg/Lで、違反すると3年以下の懲役という本格的な犯罪者扱いになります。この基準は飲酒による悲惨な交通事故が大きく報道され、感情的になった日本社会におされて決まったものです。

呼気の0.15mg/Lは、現実の危険度を示す血中の0.3g/Lになりますが、公表されている「交通事故が増加する血中アルコール濃度」のデータをみると、事故の危険性が高まるのは0.4g以上で、危険性が2割程度上がるのは、さらに0.5g程度です。

事実、報道が悲惨な事故を大々的に報じる前の基準は呼気で0.25mgであり、諸外国も厳しい国でその程度だったのに、突如基準が厳しくなりました

「アルコールを飲んで運転してはダメだからそんなこと言わなくても」という情緒的な意見が強いのですが、お酒を飲んだあと、呼気中のアルコール濃度が0.25までは数時間で下がるのですが、その後はダラダラと減っていくので、自覚的に0.15という基準は判断できないのです。だから、前の日の夜に飲んだお酒が残っている場合も酒気帯び」になってしまうという場合があります。

その結果、運転手などで勤務の前の日はお酒を飲むことができなかったり、常識的には到底酒気帯びとは言えない状態でも違反になるケースが出ています。でも、そんなことを言うと「お前はお酒を飲んでも運転して良いと言うのか!」とバッシングを受けますが、「合理的ではない取り締まりでは交通事故根絶はできない」という点では、このようなバッシングこそが交通事故の犠牲者を増やしているとも言えるのです。

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