貯まる現金、回らぬ日本経済。挑戦しない国家に未来はあるのか?

 

預金残高は過去最高の1053兆円

特に大企業の対応がだらしない。利益は輸出で稼いでおり、内部留保は史上最高に近く、金融機関に集まった預金残高は過去最高の1053兆円に上っている。しかし設備投資、技術開発、賃上げなどにまわすことなく、せいぜいM&Aに利用するのが目につく位だ。

そのM&Aは行なえば一時的には、売上げ、利益が上がるものの成功例は少なく数百億円単位以上の失敗例の方が目につく。かつてのように地味ながら時間をかけても開発に力を入れたり、従業員の士気をあげるため賃上げで報いたりしたらどうか。政府にいわれてシブシブ賃上げする“官製春闘”がはやるようではかつての日本の元気は出てこないだろう。

M&Aより日本人頭脳を信じよう

今の日本に足りないのはキラキラ光る技術や製品世界をリードし驚かす発明などだ。かつては、ソニーやシャープ、トヨタなどのリーダー企業が、トランジスタやIT、ウォークマン、省エネ車のハイブリッドカーなどの新商品を次々と生み出し、世界を興奮させた。その日本的経営や発明、開発が世界の話題になり、日本人も誇りに思ったものだ。他人のフンドシで大きくなろうとするM&Aもよいが、もっと日本人の頭脳技術開発を信じ、そこにカネをかけたらどうか。

現在、やや期待がもてるのは中堅・中小企業が宇宙や医療健康などの新分野に挑戦するケースが増え、成功しつつあることだ。だが残念なことにそうした事例はメディアで殆んど報道されない。政府はそうした企業に本腰を入れて後押ししたらどうか。コスト競争に頼っているだけでは中国や東南アジアにどんどん抜かれていくばかりになるのではないか。(Japan In-depth 2017年8月20日)

image by: 首相官邸(第3次安倍第3次改造内閣の発足)

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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