江崎グリコは、創業者の江崎利一氏がグリコーゲンを主成分とする栄養菓子グリコの製造販売を目的として江崎商店を1921(大正10)年に創業したのが始まりです。こうした経緯もあり、菓子事業が同社の主力事業で、近年の菓子事業の売上高は全体の3分の1以上を占めています。
17年3月期の事業別の売上高構成比は、ポッキーなどの「菓子」が34.3%、パピコなどの「冷菓」が26.2%、「食品」が5.7%、BifiXなどの「牛乳・乳製品」が26.9%、「食品原料」が3.0%となっています。
消費者ニーズは多様化していると言われています。それは菓子業界も例外ではありません。多様化するニーズに対応するために、江崎グリコは商品ラインナップを拡大・強化していきました。そのため、売上高は拡大していきましたが、一方で生産工場における無駄も発生していったと考えられます。
多品種少量生産(1品種あたりの生産数は少ないが、多くの品種を生産する生産方式)が進むと、売れない製品を生産する工場の生産効率が悪化すると考えられます。段取り替え(品種や工程内容が変わる際に生じる段取り作業)などの手間がかかるからです。
江崎グリコはポッキーやプリッツ、BifiX、健康分野商品など主力商品に注力する戦略を打ち出しています。そのため、売り上げ下位商品は縮小していく必要があります。商品数を減らし、それに合わせて生産拠点の整理・再配置を進めていくことが求められています。先ほど、江崎グリコの有形固定資産回転率が不安定で伸び悩みを見せていることを示しましたが、多品種少量生産が進んだことで、工場の生産効率が悪化したことが理由である可能性があるためです。
江崎グリコは経営効率を高めるために、九州と広島の工場の閉鎖以外にも様々な施策を講じています。15年に完全子会社のグリコ乳業を吸収合併しました。合理化と効率化を図り、収益性と競争力を高めるためです。
また、強化対象カテゴリーであるアイスクリームの生産体制を強化するため、グリコ千葉アイスクリーム(野田市)の工場を拡張し、生産能力を2倍に引き上げる考えを示しています。
17年3月期の有形固定資産回転率が前期と比べて大きく下がったのは、工場への投資でグリコ千葉アイスクリームの有形固定資産が約150億円増加したためです。同工場の生産開始による売上高への貢献は今期以降になるため、結果として有形固定資産回転率が下がった形になりました。
江崎グリコは、九州と広島の工場の閉鎖とグリコ千葉アイスクリームの工場の拡張などで経営効率を高めたいところです。
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