現役医師が警告。「騒音」は高血圧や心筋梗塞、脳梗塞も誘発する

 

騒音による体内への影響

騒音は体内の生理活動に2つの大きな影響を与えます。1つは交感神経の緊張、すなわち、血液中のアドレナリン濃度の上昇です。もう1つは下垂体と副腎皮質の刺激、すなわち、副腎皮質ホルモン濃度の上昇です。

進化を経た人間の体内では、アドレナリン上昇は急に起こったストレスに対抗するために獲得された反応です。獰猛な動物に出会った人間はすぐに逃げなければなりません。そのため、心拍数を増やして心拍出量を増加させ、全身の筋肉への血流を増やして、素早く逃げることができるようにするのです。副腎皮質ホルモンの上昇は、急性ストレスが起こった後の修復反応です。

しかしながら、これらのホルモンの作用により血圧は上がり、心拍数は増え、全身の血管は収縮します。これらにより心筋梗塞や脳梗塞脳出血などが起こりやすくなります。

夜間の騒音による高血圧

夜間の騒音は睡眠を妨げます。睡眠の質を下げ睡眠負債を増やします。夜間の騒音により、睡眠開始時刻は遅れ、覚醒時刻は早まります。睡眠の深さは浅くなり、途中覚醒が増えていきます。長期化することによって、日中の活動でのパフォーマンスは低下し心臓血管の機能も悪化します。

夜間の騒音に長期間曝露された人は高血圧のリスクが高くなります。通常、人間は夜になり睡眠を取ると、交感神経の活動が下がり、副交感神経優位となります。モーニング・ディップと呼ばれる、血圧が明け方には下がる現象があり、心臓血管系の機能をリセットする働きがあります。

様々な疫学研究により、睡眠中の騒音曝露と高血圧の発症にリンクがあることがわかってきました。睡眠中に窓を開けていたり寝室が大きな道路に面していたりするような場合に、高血圧の患者さんを数多く認めています。高血圧を持つ人は、ぜひ睡眠時の環境を一度見直してみてください。

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